プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第87回

社長、それではプロジェクトは失敗します。
 (その8)プロジェクトのほったらかしはダメです。

前回は、社内プロジェクトの位置づけとして大きく二つに分類しました。日常的な業務でない催事や行事、そして日常業務だが特別な目的がある場合でした。いずれの場合も、人員に余裕がある場合は組織のひとつとして設置されることになります。そうでないときは、プロジェクト活動がきわめて効果的に結果を出すことができることをお伝えしました。そのプロセスが、まさに人を育てる絶好の機会です。つまり、人が育たないプロジェクトはダメなプロジェクトと言えます。
今回は、ダメなプロジェクトとして前回の人が育たないケースにもよく見られるプロジェクトのほったらかしについて述べることにします。

【1】ほったらかしと丸投げとは異なる
何もせずにそのままにしておくことがほったらかしです。依頼するとき目的や最終成果物の説明はしたが、その後は何もしないことをほったらかしと言います。プロジェクトチームにしっかりしたリーダーがいる場合は、これでも何とかプロジェクトは進行することになるでしょう。但し、依頼主(社長)の考えたように進行するとは限りません。予定された日程計画をほぼ消化した時点で状況を聞いてみたら、社長のイメージとはかなり異なっていたということもありえます。ほったらかしておいた場合、途中で軌道修整が必要になってもできないこともよくあります。
丸投げは、よく官庁などで自ら行うべき業務を他者にそっくり委託することを指しています。また、全てを一任することや任せきりにすることも丸投げと言っています。
いずれも社内プロジェクトでは、望ましくないプロジェクトの進め方と言ってよいでしょう。社内プロジェクトでは、最初から最後まで様ざまにチェックやサポートあるいは軌道修整が必要になります。

【2】社内プロジェクトの良い丸投げとは
本連載の初回で「丸投げ厳禁」と書きました。プロジェクトのマネジメントレベルが上がってくるにつれて、良い丸投げもあります。プロジェクトの目的や最終成果物について経営者とプロジェクトチームできちんと共有できている場合、どのように進めるかはチームに任せるほうがうまくいく場合があります。こういう場合は、良い丸投げと言えます。しかし、この場合でもプロジェクトが進行するにつれて様ざまな想定外のことが発生します。その都度、経営者は丁寧に対応する必要があります。進行中のプロジェクトに対して丁寧な対応が欠けると、良い丸投げも、たちまち失敗プロジェクトへ転落することになります。これまでに述べてきたことを、改めて次のように確認します。

【3】進行中のプロジェクトが失敗プロジェクトへ転落するきっかけ
プロジェクトのマネジメントレベルが上がってきても次のような場合は、失敗プロジェクトへ近づくことになります。早めにこのような兆候をキャッチし対応を決定します。

①いったん決めた最終成果物を変更する
組立ライン増設プロジェクトの事例(連載その5)で言えば、稼働率は現状並み(70%)という計画値を設定しています。ところが、プロジェクト進行中に少なくとも75%を目指すべきといった変更の要望が表面化する場合があります(これはプロジェクトマネジメント業界では最も忌避されることです)。ここで中途半端な対応をすると、現状並みという当初の計画値すら達成できなくなる恐れがあります。残された期間と達成の可能性を厳しく判断する必要があります。

②計画した納期に収まりそうに無い
これも前述の事例(連載その5)で説明すると、あらかじめ設定してあった延長期間はプロジェクトチームで対応します。それでもプロジェクトが終了しない場合は、担当部署へ引き継ぎます。同時にプロジェクトチームは解散します。そして、プロジェクト終了の見極めは社内の会議体に引き継ぐようにします。このような対応を怠ると、本来業務と兼務している全てのプロジェクトメンバーを疲弊させることになります。プロジェクトで人が育つ、この逆の結果を招くことになります。

③人材が不足している(専門知識、アシスタント工数)
技術開発プロジェクトなどの場合です。社内の技術者に専門知識が不足しているとき、社外の専門家が活用できるなら、それを使います。知識習得の時間をおカネで買えることになります。またデータ集計作業などアシスタントをつけて技術者の持ち時間をひねり出します。社内の環境条件が許せば、技術や時間をおカネで買うことができます。

【4】ほったらかしは経営者の責任
プロジェクトは最初から最後まで様ざまにチェックやサポートあるいは軌道修整が必要になります。また、進行中のプロジェクトに対して丁寧な対応が欠けると失敗プロジェクトへ転落します。プロジェクトは乱発できないこと、またほったらかしも全くできないことがわかります。そして、ほったらかしにならないような事前の段取りや進行中の対応もわかります。前項で述べた転落のきっかけとその対応は、失敗プロジェクトにならないための一例となります。