5月のご挨拶

5月になりました。

もうすぐ新札が発行されます。世の中はキャッシュレス化の方向に向かっており、あまり話題にはなっていないようにも感じますが、千円札が北里柴三郎、五千円札が津田梅子、そして一万円札が渋沢栄一に変わるようです。これまで20年間変わらず、慣れ親しんだお札がある日から突然変わり始める。なかなかないことなので、どういう変化が起きるか個人的にとても興味があります。

新札発行の理由は、偽札が大量に出回ってお札に対する信用がなくなることを未然に防ぐことだとあります。そういった公式の理由以外にも、眠っているタンス預金を表に出すとか、マネーロンダリングを防ぐ狙いもあるなど、いろいろな理由がネット上では交わされています。日本全体に行きわたる変化であり、大きなコストがかかることですから、お札を変えることを通じて、隠れている問題を顕在化する目的があることは間違いないでしょう。

今回、私がこの話題を取り上げたのは、何かが変わると本来の目的以外のことにも影響が出てくると言う話です。

これまでずっと慣れ親しんでいたお札がある日突然違うものに変わったら、誰でも新鮮な気持ちになると思うのです。それをキッカケにお金の使い方を考え直し、良い結果が生まれることがあるかもしれません。お札に印刷された人物に調べてみたり、お金の興味から今話題の新NISAについて調べてみたり、新たな発見や興味が湧くことは大いにあると思います。

それと同じように、私たちの身の回り、特に工場で、思いもよらないところが突然に変わったらどうなるかと考えてみてください。

工場ではこれまでずっと、カイゼンが行われてきています。生産性、品質、安全などの大切な目標があり、その達成に向けて多くの時間と労力が使われてきました。逆にいうと、ほとんどのことが目標ありきで活動されており、目標外のものは対象にならず、ずっと変わっていなかった可能性があります。そこで、一旦目標から離れて、全く違う視点から工場を変えてみるということで何か面白いことが起きないか?ということです。工場の模様替えといったいつもと較べるとやや感覚的なカイゼンです。

例えば雑誌でこれまで一定のパターンであった表紙が変わると、思わず手に取って買ってしまったり、YouTubeのサムネイルを変えた途端に視聴者数が激増したりということはよくあります。そう考えると会社カタログのデザインを変えてみるのはいかがでしょうか?あるいは会社のロゴやホームページも古くなっていませんか?変えることでこれまでなかった取引が始まることもありそうです。

会員のC社では雨風にさらされて真っ黒になっていた目立たない会社の表札を、社員数人で本気で磨いたところピカピカになり、それだけで玄関の様子が一変し、毎日の通勤時に誇らしい気持ちになったという報告がありました。表札に限らず年季が入って黒ずんでいる扉や壁などもきれいにしてみると工場の印象が突然大きく変わります。このようなことがキッカケになって、いろいろな問題が見えてきたり、カイゼン活動に変化が起きたりすることがあるかもしれません。

これらは社員の皆さんに対してだけでなく、お客さまも同様の変化を感じ取ることでしょう。これまでの管理的なカイゼンアプローチの視点を少し変えて、面白いからやってみるというアプローチです。

変えてみたことによって、それぞれの人がいろいろな気付きや新しい考え方を持ち始めて、新たな一歩を提案できたりするのではないかと思っています。これまでこのデータは使っていなかったけれど、こういう使い方をしてみたら面白いのではないか?とか、今のやり方をこういったものに変えてみたらどうか?というアイデアのキッカケになることを期待しています。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫