先回、事務所の人たちに仕事の状況を時間記録してもらい、そのデータからいろいろな問題を見付けることをしました。しかし当然のことながら、データからだけでは見付けられないものも多く存在します。コンサルタントの私はこの見えないけれども確実に存在する問題を把握することをとても大切だと思っていて、これまでもいろいろな手段を使って見付ける努力をしてきました。その結果、それらを見付けるコツが分かって来たのです。今回はそのことについてお話ししたいと思います。
コツとは具体的に何をすることか…、大げさに申しましたが実は普通のことで、管理職、社員、パートタイマーを問わず事務所のいろいろな人から話を聞くことなのです。「作業遅れはないですか?」、「残業はどのくらいやっているのですか?」、「家に持ち帰って仕事をしていませんか?」あるいは「分からないカイゼンはないですか?」や「いま困っていることはありませんか?」などを相手の方が実行したカイゼンの話と絡めて雑談の中で尋ねると、例えば次のようなことを社外の人間である私にこっそり話してくれることがあるのです。
A社総務部 作業遅れはありません。こんなことを言っていいのか分かりませんが、まだ時間に余裕があるので、もう少し仕事量を増やしても大丈夫です。
B社広報部 残業はしていません。ただ、会社宣伝のSNS動画を作る作業は定時間ではやり切れないので、通勤電車の中でスマホを使ってやっています。
C社経理部 時間内に仕事は終わらせていますが、実はかなりの人が昼休みもキチンと休まず仕事をやっています。一部の人は、ばれないようにして定時後も仕事をしています。そういう人たちはかなり疲れている感じなのでメンタルが心配です。
D社設計部 うちの部署はとても会話が少なく、朝の挨拶を交わすくらいしか話をしません。そのためカイゼンにも積極的には取り組めておらず、他部署のフォローをすることができるかどうかは分からないです。
これらの問題は、私のような外部の人間には見付けられても、社内の人には部門間の壁や役職の上下関係など様々な関係性上難しいことが多く、またその内容も社内で解決しづらいことであると思います。
しかし、私がいなくてもそれらの問題を見付け解決する方法があります。まず社長が定期的に社員と話し合いの場を持つことです。それは部門の管理職の仕事だと思われるかもしれませんが、これは直属の上司では難しいことで、社長にしかできないということもあります。毎日顔を合わせる直属の上司には言えないが、社長になら言えるということがあるのです。
社長が社員と面談して話を聞き、次に社長をリーダーに社内会議でそこでの情報を元に議題を提案して議論して頂きたいと思います。完全な解決に至らなくても、まずは目に見えなかったため手付かずであった問題を会社の上部の人たちが認織し話し合いを始めるだけで解決に一歩近付きます。これは見えていなかったボトルネックの顕在化といえるでしょう。
これまで5Sから始まり事務所内の仕事の見える化を行い、個人の仕事の時間の把握をすることをしましたが、それでも見付からない問題はあるのです。それを解決する手段として「話し合い」を提案いたします。いつも一緒の直接の上司には言えないことも、経営者であり距離感がある社長には話せることもあるからです。時間調査では分からないことも社長が声をかけることで多くの情報を引き出すことができます。今回取り上げた社長が行う社員との個人面談が大いに役に立つと考えています。