プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第153回

プロジェクトチームの休憩室(1)

「プロジェクトチームの休憩室」では、カイゼンだけでなく話題を広げて筆者の見聞したことを書いていきます。ところで、仕事上のうっかりミスは新入社員に限らず経験ある社員でも起こります。その防止策で、最近、筆者が目にしたことです。

筆者の住む団地には最寄りの鉄道駅までバスが運行しています。6000世帯もある大規模な団地の周囲には鉄道路線が三線あり、バスの運行路線も10系統ほどになります。そしてバス運営の事業体として市営の他、民間企業3社もこの路線の運行サービスを支えています。バス運転士といえばクルマの運転についてのプロですが、ワンマン運転とは様ざまな注意や気配りが欠かせない仕事だなと感じます。

いつも感心するのは、乗車した人たちがバスの車内を移動中は決して発車しないことです。とくに歩行がおぼつかない老齢の方々が乗車されたときは、座席に落ち着くまで決して発車しないことが守られているようです。しかしながら、近くの大都市のバスでは乗客が着席しないうちにいきなり発車する驚きの運転も経験しました。「安全第一」は全く気にしていない運転士でした。

運賃は前払いですが、ほとんどの乗客はカードのタッチ決済です。これの普及により乗客にも運転士にも快適になりました。ときに現金払いの人もあります。そういう人に限って料金支払いのときになって財布をもぞもぞと取り出して時間を浪費します。筆者などはそれを見ているだけでイライラしますが、運転士としてはそんな風情は少しも見せず、料金が決済されると「ありがとうございました」の言葉があったりします。なかなかできることではありません。

運行ルートがいくつかあるので、プロの運転士といえども正しい進路を間違うことがあります。筆者は乗客として一度だけこれを経験したことがありました。進路を間違った状況でバスの方向転換はかなりやっかいです。車体が大きいので、気軽にUターンなどできません。かなり余分に走行しないと、もとのルートに復帰できません。筆者が経験したときは10分ほど余分に時間がかかりました。もとのルートに復帰したとき「たいへんご迷惑をおかけしました」と車内アナウンスがありました。これに対して拍手こそありませんでしたが、苦情をあからさまに口にする乗客はありませんでした。このバスを利用する市民は優しいと感じました。

バス運転士の進路ミス防止の対策が打たれていることに、最近気づきました。公共サービスの事業に携わる者として市民の優しさばかりに頼ってはいけないと考えたのでしょう。進路選択を間違いやすい地点に注意標識が設置されました。そもそもバス停には例えば「中学校前」などと書いた標識ポールがあります。それを利用して「直進」「右折」「どっち?」などと記号と文字が追記されました。もちろん運転士からよく見えるように大きめサイズの標識です。運行系統によって進路が変わります。それについて運転士の注意を喚起しようという目的でしょう。単純ですがきわめて明快で有効な対策ですね。わが国のカイゼンここにあり!職場の雰囲気が伝わってきます。