カイゼンとは? 第十七回

カイゼンの基本17 ~事務所のカイゼン4 情報の整理~
 2-2 見える化して分かったボトルネックの解消

事務所の各部門で5Sが始まり見える化が進むと、部門内だけでなく部門間の繋がりも見えるようになります。そこで部門内の流れから事務所全体の流れ、工場を含めた流れへと情報の整理のレベルを向上させ、全体の流れの中にあるボトルネックの存在を見えるようにします。

事務所でボトルネックとなる可能性が高い部門はどこでしょうか? 私は設計部門と営業部門だと思います。両者とも工場の各部門の情報だけでなく、お客様の情報も必要であり、情報の整理が簡単でないからです。

まず設計部門がボトルネックとなり易い理由は、一般的に設計にかかる時間が長いことです。設計をする際に必要な情報がすべて揃っていればスムーズに進むのですが、情報が揃わない状態で設計をスタートすることが多いようです。例えば、お客様がその製品をどのような条件で使い、求められる精度や耐久性はどのくらいかといった情報です。これには設計に必要な情報を営業が事前にチェックリストのような形で把握してお客様に教わるような仕組みが有効です。それ以外にも生産現場の設備稼働状況や人員状況、あるいは品質情報や部品調達状況なども必要であり、これらは設計担当者が普段から現場に足を運んで常に状況を把握していることが望まれます。

また、設計の仕事には必ずしも事前に分からない不確定要素も多く、スケジュール管理が難しい部分があります。遅れに対する対応を担当者個人の頑張りに任せず、設計部門全体でスケジュール管理をするプロジェクトマネジメントを実行する等のカイゼンも大切です。例えば、日本カイゼンプロジェクト認定講師の津曲公二先生の「プロジェクトでカイゼン」第11回~第12回にある2点見積法などがお役に立つと思います。ぜひご参照ください。
11回: https://kaizenproject.jp/consultant/tsumagari/project-de-kaizen11/
12回: https://kaizenproject.jp/consultant/tsumagari/project-de-kaizen12/

次に営業がボトルネックとなり易い理由は、工場の生産能力や部品・材料の調達のスケジュールの正確な把握ができず、受注判断ミスや遅れが起きる可能性があることです。日程通りに生産できるかの情報が不十分で注文が取れないことや、あるいは注文が取れても予定通り社内で作れず外注化したため利益が出なかったといったことも多く見かけます。設計はすぐに着手できるか?部品は間に合うか?会社全体のスケジュールと合っているか?などを常に把握できる体制が必要で、それを満たすためには営業は設計や製造、生産管理部門などと連携し、普段からそれらの情報がきちんと取れるようにする必要があります。

ここでは自動車用金型を作っているA社の事例をご紹介します。A社は、ある時、納入先から価格は通常の倍であるが、納期はこれまでの半分という厳しい注文を提示されました。A社は将来を考え受注しましたが、これまでのリードタイムが半分になると、設計時間だけで終わってしまうことが分かり設計部門のカイゼンを開始しました。

この受注を受けるに当たり、設計の作業分析をしたところ、設計要件で分からないことを調べたり、営業経由で先方に問い合わせたりなどで手待ちが多発していることが分かりました。そこで営業がお客様から事前に聞き込むべき情報を網羅したチェックリストを作るなどで情報精度を上げ、手待ち時間が激減しました。

設計は営業以外の部門とも頻繁に連携を取り、部品の調達の仕方や製品の作り方などの見える化された情報を整理し更に手待ちを減らし、当初全く無理だと思われたトータルのリードタイム半減を実現し、納入先から高い評価を得ることができました。この成果は他の製品にも適用できたので、A社はボトルネックの解消を実現しました。

このように見える化した情報を、部門内だけでなく部門間、更には工場全体まで広げ分かり易く整理することで、情報が共有化され速度感のあるカイゼンができるようになり、ボトルネックの解消に向かうことが可能となります。各部門で行った5Sを最適化し、全体最適化につなげていきましょう!