前回、どのような業務であれ予定どおりに進ちょくしているか、大きな遅れは無いかをチェックするために進ちょく会議があり、従来から管理者にとって欠かせないイベントになっていると説明しました。同時に、進ちょく会議はスケジュール遅延の責任追及の場になりがちですが、そうではなく目指すべきは、スケジュール遅延も含めた諸問題解決の場にすることが必要であることも述べました。今回は、進ちょく会議の前工程であるスケジュール作成に焦点をあて発想を変えたスケジュール作成のやり方を紹介します。
実行計画にはスケジュール作成が付き物です。スケジュールどおりに実行していきますが、計画とのズレが生じます。ズレの影響を判断し何らかの対策が必要なら対処策を実行してズレを問題無い範囲に収めるようにします。これが進ちょく管理です。今回は、進ちょく会議を不要にするための前提となるスケジュール作成法について解説します。
【従来のスケジュール作成の問題点】
①納期から逆算する誤り~逆線表の誤り
顧客など依頼主の要望を満たすことは仕事の基本です。しかし、設定された納期(締切日)から逆算してスケジュールをつくってしまうと「思考停止」という罠にはまります。そもそも根拠も無く、納期から逆算して日数を割りつけ見かけ上はできそうなスケジュールをつくったに過ぎません(これを「逆線表」と呼ぶことにします)。逆線表はビジネス習慣として広く普及していますが、業務効率を著しく下げる点が見過ごされています。どこにもある隠れた大問題と言えます。顧客の要望を満たし業務効率を低下させないスケジュール作成が求められています。
②スケジュール遅れ判断の属人性とリスケジューリング(再作成)
実行段階で遅れが出た場合、許容範囲かどうかの判断が必要になります。判断は知識経験によることになり、属人性が避けられません。また、遅れの影響が大きいと判断した場合は、リスケジューリングが発生します。関係部署がすべて集まって再度協議するとなると、それ自体が大きな時間の浪費になります。関係者全員の大きな士気低下にもつながりかねません。
③見積もり精度へのこだわり
作業遅れの対策として、時間見積もりの精度を高くするというやり方があります。スケジュールの時間見積もりにバラツキがあることは誰もが気づいています。従来、それをうまく処理するやり方がわからなかったので、この考え方が出てきたのでしょう。プロジェクトにバラツキがあることは避けられません。精度にこだわるよりもこれをうまく処理するほうが実践的です。
【従来の問題点を解消する2点見積もり法によるスケジュール作成】
上述した、従来のスケジュール作成の問題点を解消するための「2点見積もり法」の基本は、時間見積もりにバラツキを意識的に織り込むこと、それをバッファー(余裕しろ)としてさばくこと、この二つです。
①ひとつの作業について時間の見積もりを、次のような二つ(二種類)の方法でやります。
ギリギリ値(最短時間)・・作業が順調に進み、突発の割り込み仕事にも邪魔されない場合の最短時間です。
余裕値・・これならまず大丈夫だろうという余裕を持たせた時間です。(ギリギリ値との差が余裕になります)
見積もりを二つ出すのは一見面倒なように思えますが、これは理にかなったやり方です。つまり、ひとつしか出せないやり方ではあれこれ余計なことで悩みます。二つ出すほうが割り切って算出できます。しかも、これでその作業のバラツキを意識して織り込んだことになります。
②スケジュールの立て方
説明図【G】スケジュールをギリギリ値だけで組み立てます。余裕ゼロで納期にするのは現実的ではないですね。
説明図【Y】余裕値だけで組み立てます。これだと余裕あり過ぎです。依頼主の要望を満たすにはほど遠くなります。
説明図【S】お薄めのスケジュールです。ギリギリ値【G】を基本にしてスケジュール全体でバッファー(余裕しろ)を持つようにします。
【バッファーの量】全作業の余裕合計の50%を目安とします。
説明図 2点見積もり法によるスケジュール
注)説明をシンプルにするため、作業数は4個にしています。通常はもっと多数になります。
お薦めのスケジュールでスタートします。A~Dいずれの作業もギリギリ値ですから、だいたいもっとかかるように予想できます。例えば、Aさんの作業は予定どおり2日で終了しました。3日目にBさんが作業に着手した際「予定どおり4日で終わりそう?」と尋ねます。その予想をもとにバッファーがどう増減するかを算出していくことになります・・。
次回は、どのようなやり方で進ちょくを管理していくのか、またなぜ進ちょく会議が不要になるのかをご説明します。
なお、本稿でご紹介した「2点見積もり法」は、TOC(制約理論)によるプロジェクトマネジメント(通称:クリティカルチェーン)で提唱されているものです。また、2点見積もり法、ギリギリ値、余裕値などの名称はすべて筆者の所属する企業で設定しました。