3月のご挨拶

3月になりました。

街を歩いていると、華やかな着物に袴を合わせた女性たちを見かけます。これから学校の卒業式に向かうのでしょう。皆さん、晴れやかな表情です。ここ数年、大勢が集まることが難しかったため、このような光景もほとんど見られなかったのですが、ようやく元の状態に戻りつつあることに気づき、嬉しく感じます。

卒業式後、多くの人が就職し、会社員になることでしょう。私はそれぞれの会社が若い人たちを迎え入れるためにどのような準備をしているのか、非常に興味があります。少子高齢化による新卒の減少や、最近の若い世代の就職観の変化がその理由です。

以前は、まず社会人としての心構えを厳しく植え付けることが一般的でした。また、遅くまで残業を強いるのも普通でしたが、今の時代にそのようなことをすれば、多くの若者は「ブラック企業」と判断し、すぐに退職してしまうでしょう。

最近はハラスメントに関する意識も高まっています。しかしながら、ハラスメントとして訴えられることを恐れ、何も指摘できない状態が続けば、成長の機会がない、または、提供してもらえないという理由で、「ゆるブラック企業」と判断して退職する人もいます。管理職にとっては、若手の育成が非常に難しい時代です。

とはいえ、社会のことをほとんど知らない若者に対して、何も教えずに放置するわけにはいきません。この時期に必要なことをしっかり教えることが、将来の人材としての活用につながります。社会人としての常識やルールなどをきちんと教えることが必要です。

コンサルタントとして新人教育に携わることがある私は、学生時代に通用していたことが社会人になると通用しない事例を具体的に伝えています。例えば、少しでも体調不良があった場合、学生時代は重要な会合でもパスすることが許されていましたが、社会人になると、それぞれが役割を持ち、コストをかけて参加するため、気軽に不参加にすると他の参加者や会社に迷惑をかけます。社会人としては、自分中心の判断から、全体中心の判断が求められます。これについては、私自身の若い頃の失敗を例にしながら、分かりやすく説明しています。

情報の取り扱いについても、学生時代とは異なります。学生の時はメールでの情報のやり取りが自由だったとしても、会社を代表する立場での仕事では、漏らしてはならない情報があることを理解させます。軽はずみな言動で重要な情報を漏らさないように、その重要性を強調します。

一方で、若い人たちの声を聞くことも重要です。彼らが何に不安や不満を感じているかを理解し、対応することで、双方の理解を深め、彼らが有能な会社員になるのを支援します。そのためには、最初の1年間は経験豊富な先輩社員をメンターとして指名し、支えたり、話を聞いたりして、効果的な育成を図ることが良いでしょう。

時代の変化を無視して、「給料を払っているから働くのは当然」というスタンスで臨むのでは、新人を価値ある人材に育てることはできません。この機会に若い人たちがどのような環境で育ち、どのような意識を持って生きているかを学ぶことは価値があります。私はこれまで、カイゼンを進める上で「鳥の目」「虫の目」「魚の目」の三つの視点を持つようにと言ってきましたが、最近は「コウモリの目」を加え、四つの視点を持つように指導しています。コウモリはモノを光で見ているのではなく、超音波で感じていることと、逆さまにぶら下がっているので、見えないものを反対側から見るという意味で、若い人達の立場でモノを見てみることを推奨しています。若い人たちの視点から私たちの会社をどう見るかを考えるためです。

若い人たちのデジタル技術への精通など、彼らのポテンシャルは注目に値します。人材育成において、彼らの力を活かし、より良い育成環境を作り上げる努力も、これからの時代はさらに重要になると思っています。