脱力・カイゼントーク 第33回

工程順番と運搬順番の一致の大切さ2 カイゼン実行

これまでE社の皆さんは不適切な設備レイアウトが生産遅れの主な原因だと強く思い込んでいました。その思い込みがあまりに強すぎて、他にも改善できる点があるにも関わらず、それらに気づかずにいました。

ところが、整理・整頓を始めると、これまでにあった作業上の困難が解消し始めました。以前は作業場内に大型の部材などが散乱し、何かを運搬するたびに邪魔なモノをどかす必要があったため、面倒な力仕事が頻繁に発生していました。しかし、これらが減少し、不要な動きもなくなりました。レイアウトが悪いから仕方がないと思い込むことで、全体的にモノの置き方が雑になっていたことを全員が気づくきっかけになりました。作業が楽になると同時にモノの停滞が徐々に減少し始め、これまでの一番の問題であった生産遅れが徐々に解消され、作業者の間に常に存在していた作業遅れへの焦りがなくなりました。

整理整頓の大切さが理解されると、活動が更に活発になり、これまでどんなに頑張っても解消できなかった生産遅れがついに解決できました。

最初、レイアウト変更はとても無理と思い込んでいたE社の皆さんですが、整理整頓をすることで徐々に現場意識が変わり始めました。それまでは現場が散らかり生産に追われていたことで、大きな設備を移動させるという手順が全く思い付かないといった状況でしたが、少しずつ空きスペースができ始めると、設備の移動のプロセスが思い浮かぶようになり、皆で効率的なレイアウトの構想を描き始めました。もし工程間が近い距離でつながれると、製品の運搬は容易になります。簡単なローラーコンベアでつなげば滑らせることができるので、製品を持ち上げる必要がなくなり作業はとても楽になりより効率が良くなります。

E社は、レイアウトの変更をその後の長期休み期間に行うことを決め、実行しました。休み明けの初仕事では、多くの人が以前とは比較できないほど楽に、そして迅速に作業できるようになったことに驚きました。

トヨタ生産方式の7つのムダの中に「運搬のムダ」があります。運搬はムダなのです。例えば北海道と九州間の運搬では距離は常に一定ですが、工場内の前工程と後工程の距離は一定でなく、レイアウトによって決まります。前工程出口の直後が後工程の入り口であれば運搬距離はゼロで運搬作業は発生しません。

E社では、以前は小型の手動機械で生産していた製品が、大型の自動機械へと変わった際、適切な設置場所がなく、仕方なく離れた場所にある空き地に新しい設備を建設しました。この変更により、まさにトヨタ生産方式で指摘される「運搬のムダ」がジワジワと増えていたといえます。

この例からも分かるように、整理整頓を行うことで、大規模で実行不可能と思い込んでいたムダ取り問題が解決できる場合があります。工場内に存在するムダを再び洗い出し、見直してみることをお勧めします。これは、カイゼンの余地を見出し、より効率的な生産体制を構築するための重要なステップです。