6月のご挨拶

6月になりました。今月は環境月間ですので環境のカイゼンについて考えてみます。

海洋プラスチックゴミ問題や地球温暖化などの解決に向けた第一歩として、私たちの日常生活でもレジ袋の有料化やプラスチックストローの紙化などが起き始め、環境保護に対する一般の理解も徐々に広がりつつあることを感じます。

私は、地球温暖化、カーボンニュートラル、SDG’s、といった環境にかかわる言葉はかなり以前から耳にしておりましたが、正直申し上げて、自分の中での「環境カイゼン」の位置づけは「生産性や品質のカイゼン」と較べると意識レベルとしては低かったと思います。

しかし本稿を書くに当たって改めて考えてみて気付いたのですが、私がこれまで行ってきたカイゼンの中には既に環境対策カイゼンがかなりあり、成果をあげていました。生産性向上による電気などエネルギー消費の効率化、品質向上による廃棄物の削減、歩留まり向上や端材管理による材料の利用率向上、廃却品の分別によるリサイクル促進などです。これらは環境対策活動としてではなく、コストダウン目的で実行していたことなので見落としていました。コスト目標をクリアしたのでそこで活動を止めたものも、環境対策のカイゼンとして実行していたら更に深堀したかもしれません。あるいは環境カイゼン成果をアピールすればかなり評価されただろうことに気づかず、やらずにいたこともあったと思います。しかし、環境対策は今や世界の潮流となり、製造業の将来に向けた持続可能な経営と深く結びついており、避けて通れないテーマとなりつつあります。改めて環境という切り口でカイゼンを実行して成果を上げることが必要になって来たということです。しかし既に実行し成果も上がっている活動ですから、特別なことではありません。

そこで、環境対策としてのカイゼンの進め方を確立する目的で、一例として廃却品の分別について考えてみたいと思います。街で「混ぜればゴミ、分ければ資源」というスローガンをよく見かけますが、とても分かり易く良いスローガンだと思います。これをかかわりのあるすべての人が実行できれば大きな成果を生み出せますが、残念ながらそこまで徹底できていないのが実状でもあります。この課題の難しいところは、ほとんどの人が実行できていても、一部の人が守らなければ成果に結びつかないということだと思うのです。分別ルールを守らず丸ごと捨てる人が一人でもいれば、そのかたまりは産業廃棄物になり、リサイクルされず環境を悪化させることになります。

ではどうすればよいのかですが、荒れ放題であったニューヨーク市のスラム街がきれいになり犯罪も減少したことに貢献した「割れ窓理論」が適用できないかと考えました。 無人で放置されたビルの窓ガラスが一枚でも割れると、他のガラス窓も一気に割られてしまうが、きちんと整備されているとそのきれいな状態が保たれるという理論です。

カイゼンの優先順位の低い喫煙室(喫煙所)では、灰皿が吸い殻で溢れても放置され、「割れ窓理論」を生み出している光景を目の当たりにすることもあります。また、灰皿が溢れたことで空き缶に吸い殻が捨てられるようになり飲み物の空き缶も再利用できないゴミになることがあります。それを皆で清掃ルールや管理責任者を決めることで、きれいな状態が維持され、利用者もそれ以外の人も全員が気持ちよく過ごせるようになります。これが「割れ窓理論」のカイゼンへの活用です。

廃却物の分別も同じ考え方が適用可能です。プラスチックのラベルをはがして分けて捨てるか、そのまま捨てるかで、資源化し再利用になるか、ゴミとなるかの違いが生まれます。(これはそれぞれ収入と支出にも影響します。)該当者に活動の意義を説明し、分別のルールを決めルール順守の実行を評価することで、プラスチックリサイクルでの社会貢献が始まり会社のイメージが向上します。これは利益で判断することではなく社会とのかかわりで判断するべきことだと思います。もちろん利益を考えることも必要ですが、ちょっとしたことでできるのであれば、先ず1歩を踏み出すことで会社の将来が変わると言えます。分別作業はそのための時間が計画に織り込まれていないことが多く、手間がかかるので作業者は面倒でやらないことがありますが、生産計画に織り込んできちんと実行するのです。これらの環境対策は、実はコストダウンにもつながることが多いです。コストダウン対策が実は環境対策になっていたことの裏返しですね。

この期間を通じて、これまでにできている環境対策を見直し、更に高レベルの環境カイゼンを実行して会社を変えていきましょう!

【写真】左の写真はカンもビンも混在して捨てられています。右はビンだけが集められています。一般のゴミ捨てにも「割れ窓理論」が当てはまっています。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫