カイゼンとは? 第十六回

カイゼンの基本16 ~事務所のカイゼン3 情報の整理~
2-1 5Sの見える化の情報の整理

工場に続き、事務所のカイゼンを5Sから始めました。自分達の仕事がスムーズにいかないと生産現場のせっかくのカイゼンが台無しになることも分かり、事務所も進んでカイゼンをする必要が出てきました。

先回お話ししましたが、事務所には生産の現場と較べて多岐に渡るいろいろな部門があるので問題の存在が分かりにくくなっており、「自分達だけの見える化」でなく、「他部門の人達にも分かる見える化」にすることが求められます。見える化された情報をどう扱うかが大切です。ではその情報のカイゼンを事務所のどの部門から始めたらよいのでしょうか。もちろんこうと決まった順番があるわけではありませんが、すべての人に関わりがあるという点で以降のカイゼンのお手本となると考えて、私は総務部門が一番手として最も適正だとしました。また経費の削減は経営カイゼンに直結するので効果が出易いのです。

総務の業務の1つとして、すべての部門が使うコピー用紙、生産現場が生産で使う軍手やウエス、あるいは製品の発送に使う段ボール箱の調達・管理をしています。しかし、実際にはそれぞれの備品を使用する部門が管理をし、総務では管理し切れていないことがあります。倉庫で5Sをすると、いろいろなところから大量の使用していないサイズのコピー用紙が箱ごと出てきたりします。工場では軍手やウエスの補充が遅れて現場の人たちが古くて汚れたモノを使っていることもたまに見かけます。これらは総務が自分たちの発注の仕方をカイゼンして分かり易く見える化するだけでは解決されません。それらを使う側の使い方や依頼の仕方に問題があることもあり複雑です。

例えば工場全体のひと月の軍手の使用量が5ケースであれば、総務は毎月5ケース買っていれば問題は起きないはずですが、工場のある部門が取りに行く頻度を減らすために一回に3ケースを持って行ってしまうと他部門に供給する在庫は不足し品切れが起きてしまいます。在庫が切れたということで一回の購入量を増やすと、今度は在庫が工場中に溢れかえることになるかもしれません。このどちらも問題ですので、モノを買う総務と使う部署の双方が、使うタイミングや一回の移動量などの情報を集めて必要な在庫量を決め、毎回の引き取り量を守るルールを適用し、これまで発生していた本来なら不要な発注をなくすことが求められます。これは5Sの見える化の情報の整理といえます。

見える化の情報の整理を実行した事例として、化学品を作っているA社でのカイゼンをご紹介します。A社はいろいろなサイズの商品を段ボール箱に詰めてお客様に送っています。段ボールのサイズと在庫量は従来からのルールに従って選ばれていました。その会社の直近の発注内容は小さなものを中心とした製造が続いていたのですが、総務部門の方ではその情報を把握しておらず、小さい箱が次第になくなりひとまわり大きい箱で発送担当の人は出荷作業をしていました。途中でその状況に気づいたので、出荷する製品の情報をそれ以降、生産管理、製造部門、総務部門で会議をして情報を見える化した上で共有し段ボールの発注数を決定することになりました。その結果、それまでの発送にかかっていた費用が削減されました。これまでの部門ごとの情報を整理して、新しい全社的な体系を作ったのです。

それぞれの部門の仕事の見える化ができた次は見えた情報を整理し、全体最適の答を引き出す活動へとレベルアップしていきましょう!