事務所の仕事の大きな目的の1つは製造部門の仕事のサポートです。先回も申しましたが、事務所が自分たちの仕事をカイゼンせず品質や効率を向上させることを怠っていれば、製造部門のサポートではなく逆に脚を引っ張る事になり、更には生産効率が落ちるということにもなりかねません。実際に製造部門がカイゼンをしたのに効果が上がらない理由が事務所側にある場合も多いのです。
先回に引き続き事務所を5Sの見方でチェックしていきましょう。最初にお断りいたしますが、生産の現場と事務所とでは5Sの進め方が多少違います。生産現場では一連の生産の流れを踏まえた中で一斉に活動を行いますが、事務所の場合は全体を大きく見るところまでは生産現場と同じですが、それ以降は流れが1つではなくいろいろな流れがあるので、大きな流れの範囲内でそれぞれのテーマごとに活動を行います。テーマを絞らないで5Sを行ってしまうと、個々のテーマ毎に求められる独自の判断ができ切れず曖昧になり、不十分な結果になってしまうことがあるからです。
2回目の今回は、製造部門からの要請がきちんと見えるようになっているかをチェックしたいと思います。具体的には生産にかかわる書類、例えば生産指示書、あるいは部品、材料、備品などの発注依頼などの書類がどのように整理・整頓されているかについて見てみます。これは5Sの見える化といえます。これらの書類は誰がどのような情報を使ってどう作成されているのかが分かっているか?書類が山積みになって仕様変更を見落としてないか?といった疑問を持ち見ていただきたいと思います。
実際に現場でカイゼン会を開いている最中に、部品納入が遅れて作業が止まったり、納入された部品が違うモノであったり数が足りなかったりということに出会います。これらの原因を探ると、すべて先方が原因ということではなく、こちらサイドからの情報の発信遅れや発信間違いであることもしばしばあります。つい先日起きた事例では、事務所が部品の発注をし忘れたため生産が3日遅れ、納期を守れなかったことでお客様から重大クレームとして対応を迫られました。調べてみると発注作業の中に担当者の記憶に頼る部分があり、その時は書類が山積みになっていたため担当者に見えず発注を忘れてしまったというトラブルでした。実はこのトラブルはこれまでも頻繁に起きていたのですが、その都度、相手のメーカーが機敏に対応してくれていたため問題が顕在化しなかったのですが、今回は対応しきれなかったのです。この工場の現場カイゼンレベルは非常に高く、納期短縮で大きな成果を出して評価をされていたのですが、事務所のミスでそれまでのカイゼンの評価が吹き飛んでしまいました。
この会社では、この際にすべての発注業務を徹底的にカイゼンすることになり、事務所の整理整頓から始めました。先回ご紹介したA社同様に、レイアウトカイゼンやルールの設定も行い、見た目も能率も見違えるような事務所になりました。そしてシステムに人の記憶に頼っている部分があったのを、すべて画面上に必要な情報が見えるようにカイゼンされ、再発防止の根本的な対応がなされました。
事務所で扱われる情報は生産現場で扱われるモノと違い目に見えにくいだけに、問題があってもカイゼンがされないまま放置されることが多いのです。また事務所には生産の現場と較べて多岐に渡るいろいろな部門があるので、問題の存在が分かりにくくなっており、むしろ工場より見える化が大切な場所といえます。一旦問題が起きてしまうと影響が大きい場所です。今回の事例にもあるように事務所の5Sを見える化することで、より機能的なカイゼンを事務所全員の参加のもとに行いましょう。