カイゼンとは? 第十二回

カイゼンの基本12 ~品質向上の基本とは?~

先回までのカイゼンで、生産性向上をしましたが不良率が同じままで生産量が増えると不良数も増えてしまいます。不良品が増えないために、早期に発見する頻度の高い検査の実施を推奨しましたが、検査が増えてしまっては少なからず生産性が下がってしまいますので、そうならないために今回は検査を減らせる方法についてお話ししたいと思います。

前回の品質カイゼンは不良をなくすカイゼンでした。次は一気に品質を向上するカイゼンをします!と言いたいのですが、まずは品質カイゼンの基本となる「良品条件」についてお話しします。

検査は必用なものですのでなくすことは難しいのですが、この「良品条件」を満たすことで検査を減らすことができるといった品質カイゼンの最も基本となる話です。「こうすれば良いモノが作れる」という条件を設定して、その通りに作れるようにするのです。この「保証された品質のモノを作るなど、正しい結果を導き出すのに必要な条件」が「良品条件」です。設計を見直すとか、新しい設備を導入するといった何か特別なことからではなく、安定して品質を維持する条件決めから始めます。

良品条件の設定は、現場で良い品質を作るのに必要な条件とは何かを考えることから始めます。材料、設備、人、作業方法、環境など品質の作り込みに求められる項目を抽出して、それらがどうあればいいのかを良品条件として設定するのです。

例えば、材料はいつも正しく使える状態になっていますか?
新しい材料の中に古い材料や種類の違う材料などがゴチャゴチャになっていませんか?古い材料は、表面のキズや錆や汚れを取り除いて使えるようにするには更に時間がかかりますので、常にすぐに使える状態で保管されている条件が必要です。端材は材料をムダにしないでコストを抑える大切なモノですから使えれば使います。しかし管理を怠るとすぐに使えない状態になってしまうので、そうならないためにも条件決めが必要となります。

同様に設備の定期点検などの管理はいかがでしょうか?
古い大きな機械でも点検、メンテナンスや工具交換基準が標準化されていて、特定のベテラン以外の方でも使えるようになっていますか?といったことを調べてみましょう。何か発見があるかもしれません。

良いモノを作るカイゼンとは特別なことではなく、安定した条件下で作ることで、不良を減らし検査も楽になり、結果的に検査を減らせることになるのです。

良品条件というちょっと専門的な堅い感じの言葉を使いましたが、簡単にいうと料理のレシピのようなものです。例えばラーメン屋の煮玉子やてんぷらの半熟玉子などの黄身が固まっていない半熟玉子を作るための良品条件とはどのようなものになるのでしょうか?

ゆで卵ができる理論は、たんぱく質は熱で固まるということであり、卵への熱のかけ方の条件が分かるといいのです。「ゆでる」方法で熱をかけるので、「卵の温度」と「湯の温度」との「時間経過」での関係が分かることと、「卵が割れたりしない」ことが良品条件です。半熟という微妙な状態をいつも作れるためにはどのような条件が必要でしょうか?私は自分で半熟のゆで卵を作った経験がないので良品条件に沿った作り方で挑戦します。この場合の良品条件はクックパッドで見つけたレシピです。

1.大きめの鍋にお湯を沸かす。大きめのボールに氷水をたっぷり作っておく。卵はまだ冷蔵庫でOK。
2.沸騰したら卵を入れる。このとき、卵にヒビが入ってしまうと白身が漏れてしまうので、お玉やザルを使って入れましょう。
3.茹でる時間は、冷えた卵で6分間、常温の卵なら5分半です。
4.できたらすぐに氷水の入ったボールに卵を移しすぐに冷やします。(殻をむき易くするため)

簡潔な文章ですが、良品条件として必要な「卵の温度」と「湯の温度」との「時間経過」や「道具の使い方」が入っています。ということでこのレシピ通り作ってみました。





自分で半熟ゆで卵を作ったのは初めてでしたが、見事に半熟で実に美味しくできました。良品条件が整ったレシピのお蔭です。

今回は良品条件という切り口で品質向上のカイゼンをご説明いたしました。もし品質問題を抱えた職場がおありでしたら、まずは良品条件がどうなっているかをチェックしてみてください。必ず良いカイゼンの切り口が見つかります。