モノづくりの現場探求 第十三回

第12回の原稿に表現上伝わりづらい箇所がありましたので修正させていただきました。
第12回を読んでから13回を読んでいただけますと幸いです。


人の育て方 ~柿内流「考える」はカイゼンのやり方そのもの~

先回、私はIBMの社是である“THINK”の定義でカイゼンを進めていると書きました。私がカイゼン用に作り直した「考える」は①現場を見る、②現場の人たちに聴く、③ワイワイガヤガヤ議論する、④即実行、そして⑤THINK(考える カイゼン実行)の5ステップです。カイゼンはこの「考える」の5ステップを繰り返して現場を良くしていくことです。まず1回実行して、そこで現場やお客様の対応や反応を見て更に2回、3回と繰り返していくと、本当に素晴らしいカイゼンになって、そこで働く人にも会社にも大きな成果が生まれます。

以前、自動車の点検や修理をする整備工場で「考える」のステップを繰り返してカイゼンをしたときの事例をお話しします。会社に伺うと、営業部長が本当はもっと注文を取れるのですが、工場の生産能力が低いので注文を抑えている状況だと教えてくれました。

そこで工場の生産能力アップを実現するためにこの5ステップを説明し、柿内流の「考える」を実行してもらいました。

① 私も参加して皆で現場に行って仕事のやり方を見てみました。すると整理整頓が不十分なため道具や部品を探す時間が多いことや、設備の不具合で頻繁に手待ちが発生しているなど、多くの問題が起きていることが分かりました。
② 参加者がそれぞれの作業担当者に話を聞くと、ほぼ全員が自分の仕事にかかわる具体的な問題点をあげました。多くの人は問題の存在を自覚していましたが自分一人では対応できないと考えて、そのまま放置していたということでした。もし皆でこれらの対策をすれば生産能力が上がるのではないかという期待があることも分かりました。
③ そこでどのように進めるかの議論をした結果、それまでのようにバラバラに活動を実行するのではなく、時間を決めて、全員で一斉に活動を行うことにしました。また設備不具合については、本来は不具合が発生した時に修理するべきであったのですが、外部に修理依頼すると高いので、いつか内部で直そうと後回しにしてきたという意見が出ました。
④ 工場長をリーダーとして全員で工場全体の5S活動を行うこと、そして不具合のある設備をリストアップして修復することなどを決め、必要な作業とチーム編成などの手順を具体化し、4ヶ月で生産能力を2割上げる計画を立て実行を開始しました。5S活動は皆で一気に実行すると短時間で現場が見違えるようにきれいになりました。また設備不具合もまずは自分たちで修理して、難しいところは専門業者に修理を依頼した結果、小停止や品質のバラツキなどの問題が一気に解決し品質や生産性が向上しました。一連の活動で、短時間で目に見える成果が生まれ、参加者のモチベーションが大いに向上しました。
⑤ ①~④のステップを実行した後、最終の⑤ステップでその結果がどうであったかを振り返り評価し、その後のカイゼンをどのように展開していくかを検討しました。そこで終了するか、継続するか、広めるか、深めるかといったことを考えるのです。これが“Think”であり、これを何回も繰り返し継続するのがカイゼンです。私がカイゼンにおいて実践している「考える」ということは、何もしないでただ頭の中で考えるのではなく、①~④のステップを踏んだうえで「考える」ということなのです。もちろん「今すぐやらないための言い訳」や「あるかどうか分からない正解を探す」ことでもありません。

①~⑤のステップを繰り返してカイゼンを実行した結果、4ヶ月後には2割の当初計画を大幅に上回って3割も生産能力を上げることができました。

工場の能力が上がったので、営業に遠慮なく注文を取って来て下さいと依頼しました。ところが、当初の勢いのような注文は取れず、工場に手待ちが発生し始めました。

次回は、営業部門が始めたカイゼン活動についてご紹介いたします。