モノづくりの現場探求 第十二回

人の育て方 ~「考える」とはどういうことか?~

以前のことですが、現場で若い人がとても良いカイゼンのアイデアを出してくれたので、上司の方に「今すぐにやりましょう!」と持ち掛けたところ、「ちょっと考えさせてください」という返事が返って来ました。その時、アイデアを出した若い人の表情が少し曇った様に感じました。あとで聞くと、その上司はいつも「ちょっと考えさせてください」と言って実行を後回しにして、結果として何もやらないことが多い人とのことでした。

この時の「ちょっと考えさせてください」が「私は決裁権を持っておりませんので、上司の意見を聞く必要があります」や「大きな決断であり、もう少し幅広い意見が必要と思いますので、あと少し時間をください」といった意味でないことは明らかでした。彼は「もし間違ったらどうしよう…」と心配し、その場で実行する決断ができなかったのでしょう。現場カイゼンはもし間違ったら、元に戻せばいいという気楽さもある活動です。しかし結局、このカイゼンをその場で実行することはできず、残念ながら少し遅れが出てしまいました。

もちろん私たちは今の大きな変化の時代のカイゼン実行にあたり、しっかりと「考える」必要があります。しかし、この上司のような「考える」であると真逆の動きになってしまいます。そこで今回は、改めてカイゼン実行における「考える」とはどういうことかについて「考えて」みたいと思います。

そうは言ったものの、私は高校・大学でもどうやって「考える」のかを教わったことがありません。先生の授業を聞いてテストを受けるという「覚える」と「思い出す」ばかりであり、授業中に「考えて」先生に質問する学生はほとんどいませんでした。

当時の義務教育での傾向は今の大学生にも続いているようです。先日の日経新聞のコラムで、東工大の上田紀行教授が日米の大学生の比較をして、アメリカでは「先生の講義のここが納得できません!こうではいけませんか?」といった考え方についての質問や意見がたくさん来る。一方、日本では質問はほとんどなく、あっても「ここが分からないので教えてほしい」という答えを求める質問ばかりだといったことが書いてありました。コラムの締めくくりは、日本には日本の良さがある。でもこの差は大きい、とありました。

これらのことから、日本では多くの人が「考える」ことを「正解を見つけること」と思い込んでいる節があります。昨今の大変化に対応するカイゼンに前もって決まっている正解などあるわけがないにもかかわらず、正解が見つかるまで実行ができないとあれば、日本の大きな問題です。

しかし私はある時、アメリカのIBMの社是が “Think! (考えろ!) ” であることを知り、興味を持ちました。その社是には4つのステップで意味の説明がありました。これが私の考えにぴったりであったので、私はこれを現場改善用に作り直して使い始めました。

以下がIBMの原文となります。この順番で考えるに至るということです。
① READ (本などを読む)
② LISTEN (人の話に傾聴する)
③ DISCUSS (周囲の人たちと議論する)
④ OBSERVE (物事の推移を観察・洞察する)
⑤ THINK (考える)
というものでした。

そしてそれをベースにした柿内流は
①現場を見る。(現場に立って、そこから知る)
②現場の人たちに聴く。(現場で起きていることを、共感・反感を含めてよく聴く)
③ワイワイガヤガヤ議論する。(周りの人と意見交換する)
④即実行。(実際にどうなるか実行して結果を見る)
⑤THINK (考える カイゼン実行)

ここには覚えるも思い出すもなく、みんなで集まって、見て、アイデアを出し、話し合って、その場でカイゼンを実行することが「考える」ということです。私は「考える」とはまさにこれだと納得しました。私はこの定義の「考える」でカイゼンを進めています。次回に続きます。