物流事業者との取引を見直す(3) 荷主勧告制度

「標準貨物自動車運送約款」の見直しと同時に、「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」及び「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」の改正も行われました。

特に「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」は物流提供者と荷主との間の取引を適正化するために記されたガイドラインであるため、別の機会にきちんと紹介をしたいと思います。

今回は荷主会社の多くが認識していないと思われる「荷主勧告制度」について触れておきたいと思います。

輸送過程における事故は第三者に影響を与えることが多く、社会問題化する機会もあることから皆さんもある程度認識はされていることと思います。

トラックの事故により犠牲者になる方もおり、これは見過ごせないレベルにあるでしょう。そしてこのような事故は運転者の不注意もありますが、法令違反によって引き起こされるものも少なくありません。

たとえば速度超過。皆さんもクルマを運転されるでしょうから、非常に身近な法令違反かもしれませんね。荷主から提示される納期を守ることは当然ですが、場合によっては渋滞や天候不順でやむなく遅れが発生することがあります。その時に速度超過が発生しやすいのではないでしょうか。

たとえば過積載。特にトラック積載能力を上回った積載は事故だけでなく、道路や橋梁などの社会インフラに大きなダメージを与えます。トラックの荷台に隙間があるからと荷主が重量を認識せずに追い積みを指示していないでしょうか。

たとえば運転者の労働時間のルール違反。運転者は1日の拘束時間や運転時間、連続運転時間などがきっちりとルール化されています。運転者の疲労によって引き起こされる事故は第三社にも被害をもたらす許すことのできない行為です。構内待機時間が存在するためこのルールを守れなくなってしまうようなことはないでしょうか。

このような法令違反はその行為を行った運転者の、そして運送会社の責任です。でももしこのような行為を引き起こす要因が荷主側にあったとしたらどうでしょうか。

国土交通省は平成29年7月1日から「荷主勧告制度」をスタートさせました。上記のような行為を行った荷主に対して勧告を行うという制度です。

荷主が指示するなど主体的な関与が 認められる場合は即座に勧告となり、社名が公表されることになります。

主体的ではないものの、荷主の関与があった場合には警告が行われ、3年以内に同様の事案が 再発した場合に勧告となります。

今までは運送事業者の責任にとどまっていましたが、いよいよ荷主にも責任が問われることになりました。ぜひ社内で上記のような事例に関与がないかどうかチェックしておきましょう。