脱力・カイゼントーク 第12回

先日このX(旧Twitter)の動画を見て私は大変に驚きました。

https://twitter.com/TOYOTA_PR/status/1699729624312525297

トヨタの豊田章男会長が車を運転中に「これ何の車ですか?」という質問を受けて、「ホンダです、サイコーです」と答えて去っていくトヨタが制作した動画です。そしてハッシュタグ「♯CMに使っていいよ」も付けられています。かつて私が自動車会社に勤めていた頃は、従業員はもちろん協力メーカーもすべて自社の車を使うという暗黙のルールが厳格に守られていました。自分の会社に誇りを持つことイコール他社の車に乗らないといった不文律があったのです。その印象が強いので、社長自ら他社の車に乗ってほめるという動画を見て本当に驚きました。

これを若い友人に話し感想を求めたところ、彼は驚かず「いいじゃないですか、研究熱心で」と、軽い反応が返って来ました。彼によると、業界によってはライバル同士がお互いの商品をほめ合うSNS動画は珍しくないそうです。

もう一つ別のSNSの話です。東京駅に隣接する大丸百貨店の一階はお菓子売り場で、私は出張の時にしばしば前を通るのですが、この頃とても混雑しています。再び前出の若い友人にそのことを話すと、「今、大丸は『お菓子食べ過ぎ会社員』というSNSがバズっていて、それを見て来ている人も多いと思いますよ」とのこと。本当の大丸社員の「のざきさん」が仕事中にいろいろなお菓子をおいしそうに食べる動画ですが、とても面白いです。

https://www.tiktok.com/@tabesugi_nozaki/video/7202921354499280129?lang=ja-JP

仕事中に社員さんがお菓子を食べるという、これまでであれば不謹慎ともいえるテーマの動画が、会社の公式SNSとしてアップされて成果を出していることにも驚きました。最近、若い人の動画コンテンツでは、仕事中にこっそり食事することを面白く見せるモノも多く出ているようです。

これはどういうことなのだろうか...と考えてみたのですが、若い人が主導するSNSの世界ではすでに当たり前のことが、私が属する中年以上の世代にも広がっているのだと思いました。私は若い時に当時の社会のルールなどに随分疑問を持ったことがありましたが、いつの間にかそれに慣れてしまっています。しかし、今の若い人の文化が社会に浸透し、これまでの硬直したしきたりのようなものが少しずつ崩れ始め、これまでは「ダメだ」と思い込んでいたことが実現可能になって来ているのかもしれません。この変化は素晴らしいと思います。

昔は当たり前にダメであったことが、今ならできる可能性が高まっています。例えば、トヨタ、日産、ホンダが一緒になって世界を驚かす革新的なEVを生み出す可能性もあるのではないでしょうか?

現在、私は若いころに感じた疑問を改めて思い出しています。例えば、以前自動車会社に勤めていた時に、当時の生産管理システムについてカイゼンすべき点を指摘し、カイゼン案をまとめて上司に提案しました。しかし上司からはいずれ人事異動で所属部署が変わることを考慮して、その間に自分で完結できる必要があると却下されました。当時は上司の意見に従い、自分の洞察が不足していたと反省しました。しかし今考えると、私の提案は正しかったし、自分の意見を撤回すべきではありませんでした。振り返るとそれ以外にもやればよかったということがたくさん出てきました。そして、今でもやればやれるのにできないと思い込んでいることがたくさんあると気付き、これからでも遅くないのでやり始めようと決意しました。

これまでは「挑戦してはいけない」と思っていたことに挑戦することは、これからはムダではなく、成功の可能性を模索する重要なステップになると思います。このような考え方でカイゼンをレベルアップしていきましょう!