輸送インフレ時代の次の一手(2) 輸送距離の短縮

物流コストを構成する以下の数式の右辺の要素を縮めることを考えていきましょう。

◆ 物流コスト = 物流単価 × 物流量 × 距離

まず今回は距離の短縮について考えていきましょう。モノは消費される地域でつくるということが鉄則です。そのために最近では大企業だけではなく中小企業まで海外進出するようになりました。

これは国・地域レベルでの話ですが、日本国内でも消費地の近くでつくることは物流の観点から望ましいことだと言えます。

食品産業はこの傾向にあると思われます。一カ所で集中的に生産して全国に配送するというより、いくつかの地域に工場を設置してそこから配送することでリードタイム短縮と物流コストの圧縮を図っています。

これは工場の配置だけではなく配送センターの配置で対応している会社もあります。工場は一カ所であっても配送センターを各消費地に近いところに設け、そこからお客様のもとへと届けるパターンです。

この場合、配送コストは下がりますが、配送センターを設けることによるセンター運営費と在庫増の可能性がありますのでトータルコストを把握して判断していきましょう。

食品や日用雑貨などは卸の配送センターを使ってお客様へのリードタイムを短縮する対応をしているものと思われます。

では工業製品などの場合はどうでしょうか。

工業製品は最終組立工場を持つ会社に納入し、そこでアッセンブリされた後に消費者へとデリバリーされます。そこでこの中間の工場間(会社間)物流を効率化する必要があります。

そのためには最終組立工場の近隣に工場を設け、輸送距離を縮めることで物流コストを下げることが望まれます。

よく言われる企業城下町はこの発想のもとに形成されていきます。城下町の中に立地することで最終工場までの距離は縮まりますので「ニアサイト」での生産と位置づけられます。

さらにそれを進化させたものが最終組立工場の敷地内で生産する「インサイト生産」ということになります。このケースでは公道を走る必要が無いためナンバーなしのトラックで運ぶことが可能となります。トラックを使わずに台車での運搬も可能でしょう。

もっと進化させれば最終組立工程のすぐそばで生産する「オンサイト生産」ということになります。極めて輸送効率を低下させるような製品はこの方式をとることで物流効率悪化を食い止めることが可能になるのです。

次回に続きます。