新・虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第3回

インダストリー4.0 産官学一体の取組み

● ドイツ企業がインダストリー4.0で積極的に相互協力し始めた
 ドイツの第4次産業革命(以下インダストリー4.0)で、製造業の競争力強化を維持し強化する政策で、既に日本でも知られるようになっています。これは、生産効率の高い考える工場を実現することを手段にしているものです。
 2011年から、SAP、BOSCH、SIEMENSの3社を中心に進められている政策です。ドイツの工場はそれぞれ個性が強い反面、逆にやり方もバラバラです。インダストリー4.0をきっかけにして、さらに強いドイツ産業をつくろうとしています。そこで、ドイツとしての競争力を強くするために、相互間で共通化を考えたのでしょう。EUになって特にドイツは経済が非常に好調で、今では納期が数か月待ちの製品もあります。でも中国や日本などと比較すると、よい点も改善すべき点もあることを知り、危機意識をもって取組もうとしているしたたかな面も持ち合わせています。
 一見経済が好調であるように見えますが、シリアなどの難民問題で多くの金を彼らに補てんしており、メルケル首相は国民からは総スカンに合い、選挙も負け政治も混乱しています。現在は難民の方が生活保護者よりも良い暮らしをしており、ますます政府への不満が奮発しています。結局16年間務め、2020年に退官しました。
 個人的には、それよりも生産方式を見直し、仕掛や在庫を削減してからインダストリー4.0に取組んだ方が本当の生産革新ができるのですが、トップはまだその意識はあまり持っていないようです。これは、最近の10年間に日本人のコンサルではなく、ドイツ人のコンサルが増えたことによる影響が大きいと考えます。分かったようでも実際には、また本質を理解していない点に、まだ日本の製造業の勝算があると考えます。

● エレキで出遅れた分を官民学で取りもどうとしている
 ドイツは、メカはとても強いですが、エレキは弱くメカトロも非常に弱いのです。ドイツ車を購入した人たちは、このことを体験済みだと思います。メカトロの代表のロボットなどは日本の強みであり、これは現在も歴然とした相違です。その遅れを一気に取りもどそうと官民学でチームになっています。ドイツはサッカーだけでなく、目的や目標が一致したら凄いチーム力を発揮する国民です。
 官民学や労働組合など多くの人たちが、このインダストリー4.0に参加していることに意義があると考えます。現在数百社以上が参加しています。スポーツ用品のA社のように、自分のデザインした運動靴を1個から作り、短納期でかつ安い商品づくりを行っています。大量生産型から個人のカスタマー化に対応する工場や生産のプロセスを革新して、生き残りをかけている取組みの表れです。現在もカスタマー生産は色々な分野で行われています。
 田舎の中小企業も負けてはいけないと、横のつながりと模索しているのが感じられます。訪問先の旧東ドイツ地方の窯業が盛んだった地域では、地元の大学と協働してセラミックや新しい材料の研究をして商品化しています。
 また多くの企業が近くの大学と一緒に研究しています。その共同研究したものを商品化したり、その学生を入社させたりして、知識レベル向上と人間関係の構築を図っています。
 また大学生は、卒業前に半年間実際に企業で仕事をします。ですから卒業までに、一番早くても4年半はかかります。そしてレポートも提出したり、実際に作業改善や試作品を製作したりします。日本のように、3年で3割以上が企業を辞めるという話は聞きません。企業での事前研修など学生が現場を体験する方法は、日本も見習いたいものです。
 ただインダストリー4.0やIoTの意識は、ロボット化、デジタル化など、工場やあらゆるものをつなぐというより、まだ目の前にあるものをデジタルでつなごうというレベルが多いようです。筆者は、まず仕掛や在庫を減らし、工程を簡素化することを指導し、それがある程度できてからの導入をさせていました。

● 多くのメッセ(見本市)を活用して相互交流を図っている
 2017年のハノーバーメッセでは、インダストリー4.0のPRを兼ねてメルケル首相も参加して参加しました。首相が訪れたブースの1つに、著者がコンサルしている企業が紹介されました。とても名誉なことです。著者も何度かメッセに参加しましたが、1日では見て回れないほどの世界から多くの企業参加があります。それだけ多くの最新の情報やアイデアがなだれ込んでいます。
 ハノーバーだけでなく、デュッセルドルフやシュツッツガルトなどドイツ全国で実に多くのメッセが頻繁に開催されています。ドイツの周りはいずれも陸続きであり、各国から参加者があり、現物を手にしながらお互いに実に上手く交流を図っています。
 コロナ禍でお互いに顔を合わせることができなくなっていますが、あらゆる方法を考えて交流をしておくことも大切だと思います。