新・虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第14回

40数年前と今の物価の違い

● 初めての海外旅行は、40数年前のヨーロッパでした
 40数年前の初めての海外旅行が、ドイツとオランダでした。友人からの絵葉書がドイツから届いたのです。初めての海外旅行は気軽にお隣の韓国を予定していましたが、この絵葉書をもらい急きょドイツに切り替えました。
 事前準備を1年かけて行い、ユーレルパス(ヨーロッパの鉄道の一等車がパス券で乗れる)、ホテル、飛行機などの手配もすべて自分で行いました。これがヨーロッパに興味をもつきっかけになったのです。まさか20年後にヨーロッパで仕事をするとは、想像もしませんでした。
 当時はロシア上空が飛べないために、南回りのコースを取り、シンガポール、パリ経由で、合計28時間かけてドイツのフランクフルトまで行きました(直行では、12時間)。目的地でなく途中で乗り換えるというトランジットがあるのを、初めてシンガポールで知ったというまるで珍道中でした。3週間で50万円使いましたが、価値ある旅行でした。
 ガイドブック(地球の歩き方)と4か国語の会話集をもって出発です。ドイツ語は単語を並べて最初からジェスチャーとメモでのやり取りで、失敗の連続でしたがとても楽しい旅行になりました。数年間ほとんど有給休暇を取らなかったので、3週間の休みをまとめて取得することができました。
 今はスマホ片手に旅行ができますが、当時の情報の少ない中での一人旅行はかなり不安でした。それでも困ったらすぐに自分から話しかけるスタイルで、問題を次々に解決しながらの楽しい旅行ができました。
 一番きつかったのは、途中でユーレルパスをなくしたことです。車掌と駅員に何とかならないかと1時間くらい交渉もしましたが全くダメで、その後は格安の2等車での旅行になりました。でもそれが幸いしました。1等車はほとんど乗る人が少なかったのですが、地元の人たちと面と向かって気軽に話をすることができました。珍しい東洋人がいるので、彼らも話しかけてきます。昼から各地元のビールを片手にしていますので、思いのほか会話?意思疎通はスムースにできました。
 困っていることをアピールすれば、ヨーロッパの人たち積極的に助け船を出してくれます。逆にアピールしなければ何もしませんが、この辺が個人主義というのでしょう。ドイツでは隣の家の窓が汚れていると、近所から掃除をしなさいと苦情も堂々といいますが、この辺りは日本と違います。夜10時から朝7時までは、洗濯機も使えません。

● 100円ライターは今や100円で2個3個の時代に
 愛煙家だったのですが、旅行の途中にマッチがなくなり、ライターを買うことにしました。日本で見たことのあるライターがドイツもあるかと感心しながら買ってみると、メイドインジャパンでした。しかも100円ライターが、ドイツでは180円でした。これは大ショックでした。1972年に日本で、使い捨てライターが発売されました。商品名は、「チルチルミチル」でしたが、「100円ライター」と呼んでいました。
 なぜ100円なのかと考えて見たことがあります。当時は、マッチでタバコに火をつけて吸っていました。マッチは喫茶店でもらうことがほとんどでしたが、店で買うと20本入りで5円でした。100円ライターは、マッチの20倍の価値がある計算ですから、400回以上点火すると考えました。
 そこで実験しました。まず観察です。まず着火をしたことを確認し、タバコに近づけて火をつけ、さらに少し離してから火を消したことを確認する動作ですが、2秒間でした。ならば2秒でどれくらい着火できるか、計測してみました。結果は、630回でした。タバコ20本入り1日に吸うと、31日=1ヶ月ということでした。しかも、マッチより断然安くタバコに火をつけることができました。
 近年ライターを使うことがなかったのですが、ヨーロッパのホテルや企業などサービスでもらったもの保管していたのを改めて確認してみますと、面白いことがわかりました。子どもがいたずらしないように着火する力がとても強くしたもの、レバーを後ろにずらしてから押さえないと着火しないポカヨケが施してあるものがありました。さらにLEDのランプ付き、またガスを充てんできるしくみがあり、機能が追加されていました。
 やはりドイツ人はケチです。ライターでも使い捨ては嫌うようで、ガスを充てんできるタイプが多くありました。中には、栓抜きの細工もしたものもあります。日本でも百円均一の店が賑わっていますが、今では使い捨てライターは100円で3つも買えるまでにコストダウンされています。ヨーロッパも同様な店があり、1ユーロの店ででも同様に複数個買えます。生産地は、今や中国です。

● ビールの値段は、40年たっても変わりません
 当時ドイツで流行っていた炭酸飲料水の「ファンタ」は、実は米国ではなくドイツで考案されたものです。ビールは500ccで1DM(当時ドイツマルク:120円)、でも「ファンタ」は180円でした。ビールより炭酸飲料の方が、値段が高いのです。ビールは、40年以上たっても1ユーロ(約140円)のままです。ドイツ人は、凄いと感心します。
 安いビールを探していると「Netto」というスーパーでは、自社ブランド「Karskrone」というビールを数種販売しています。500cc×6本で、なんと1.59ユーロ(6本で約222円:1本37円)です。1本でも買えます。彼らの企業努力は素晴らしいと感心します。ただしプラスチックのビンです。
 夏になるとラードラー(直訳:自転車乗り)というビールを自分でつくります。とてもさわやかで、スカッとします。自転車に乗っている人が、喉が渇いた時にこのような飲み方を考案されたそうです。どのレストランでもメニューにはありませんが、頼めば提供されます。 
 さてラードラーの作り方です。ビールより発泡酒の方がお薦めです。ビール4に対し、レモネード1の割で入れて軽くまぜると出来上がりです。今年の暑い夏、このラードラーをお勧めします!