新・虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第10回

言葉より手振り身振りで伝える

● 見た目で9割は伝わるメラビアンの法則を多用する
 ヨーロッパでは、「マツダは、本当で日本人か?」とよくいわれます。彼らの想像する日本人のイメージからすると、かけ離れた人類のようだといいます。「そうです。体に流れている血液の半分は、イタリアとスペインの赤ワインで構成されているから当然です。」とうそぶいていますが、皆さんは大笑いです。
 ヨーロッパでは冗談やユーモアがなければ、余程のカリスマ性がないとやっていけないと考えています。私にはカリスマ性がないので、その他の才能で勝負しなければなりません。
 人のもっている性格傾向として5つあるそうです。①開放性、②外向性、③誠実性、④協調性、⑤神経症であり、日本人のDNAは農耕民族や自然災害があったことから③と④が特に強いそうです。私は、完全に①と②の性格のようです。ヨーロッパの狩猟民族の違いからも背景にあるようで、彼らは①と②が多いということです。
 ヨーロッパ人に伝えたいことを確実に伝えるには、意外にも言語ではなく見た目がほとんどということを随分前に知ることができました。これがメラビアンの法則です。
 話の内容や意味といった言語情報が7%、声の大きさ(これには絶対の自信あり)や話し方やイントネーションやテンポといった聴覚情報が38%、そして表情や目線、態度やしぐさという見た目の視覚情報が55%というものです。
 最初通訳が短期間で十人以上も変わったので、考えが伝わらないのは通訳の問題かと思いました。でもイラストや絵ときで説明すると、伝わりやすいことに気づきました。さらに大げさなジャスチャーや物語で解説して解いていく方法も交えると、とても良く伝わることがわかりました。
 色々な国に行くので言語はまったくわかりませんが、聞き手がわかったどうかを判断するには、眼を見ることで9割以上の確率でわかるようになりました。
 理解そして納得したかどうかは、ワークショップの結果やセミナーではアンケートの集計でわかります。ヨーロッパ人は、余り愛想はありませんので、思った評価をズバリ出してくれます。ヨーロッパの評価方法は、日本とは違います。
 日本は5段階の5が優秀ですが、彼らは6段階の1が最も良いというものです。勘所がわかってきたので、話の内容にこれらのエッセンスを加えればよく、手前味噌ですが良い評価を得ています。逆に日本ではよくても悪くても反応が、イマイチはっきりしないので不安になります。

● 身近な事例ほど感動するので、その工夫を怠らないことが大切
 ジェスチャーとともに気づいたことがわかりました。それは、ヨーロッパではいきなりその話を持ち出すよりも、一見別な話題やエピソードを紹介しながら、背景を説明していけばとても反応が良いことがわかりました。
 さらに物語やエピソードのネタを彼らはメモにも取らないでも、ちゃんと覚えていることもわかりました。意識が違っているのでしょうか、ワークショップや生産活動にも反映されます。
 そのネタは、身近にあるものほど記憶に残ることがわかりました。例えば、指の5進法から2進法で数を表現する方法です。普段5本の指で数を数えても5つまでですが、片手で6を表現してみてと問いただします。誰も思いつきません。おもむろに人差し指と中指を立てて(つまりVサインの指の形)で「これが6です」といっても一向に不思議な顔をしたままです。
 そして、親指を出して、これが「1」。「2」は、人差し指だけを出します。2進法の説明をしてようやく納得です。しかもこれを考えたのは、皆さんの先輩のライプニッツだというと皆さんがビックリです。しかも300年も前に考えたのです。
 「2の5乗=32まで片手で数えられるので、やり方を変えることで今までできなかったこともできるようになりますよ」と説明します。時間がない、人がいない、お金がないなどと言い訳していた人たちが、Vサインを出すと笑顔になって言い訳でなく、できるにはという積極的になります。
 さらに腕時計を見てみもらい「今何時?腕を後ろに回してください。さて文字盤はどうなっていましたか?」という設問も良く使います。コーラや炭酸水の王冠のヒダの数は何個か、そしてなぜその数なのか。A4の紙の重さは何グラムかなどです。
 部屋にある黒いものはいくつありますか?目を閉じてください。さて問題です。赤いものはいくつありましたか?5つ思い出した人は手を挙げてください。ネタはいくらでもあります。普段意識していなかったものばかりです。

● 小道具も使いこなし、言葉でなく意思を通じさせる
 小道具で一番好評なのは、やはりサッカーの国ですので“レッドカード”と“イエローカード”です。これをYシャツに左右にポケットをオーダーで作ってもらい、左胸に赤、右胸に黄色のカードを入れます。現地語で話しできないので、思わずこのカードを使って指示する方法を考えました。
 効果てきめんです。さらに良いマークは、「〇」と書いて緑の丸いカードにしました。Gutカードをある日3回だしたらもっと良いカードはないかといわれ、濃い緑のカードに「◎」(とても良い)カードをつくりました。大人になっても褒められることは誰でも嬉しいようです。いずれも手づくりです。
 さらにフリップチャート(模造紙)の油性ペンは、いつも持参するようにしています。しかも黒、赤、青、緑の4色です。ボールペンも同じ4色で、しかも透明なケースで中身が見えるものを持参し、目で見る管理で「インクの欠品なし!」とアピールします。
 オリジナル性があれば、評価が違ってきます。自らひと工夫、ひと手間をかけることで差別化できます。