虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第28回:同じものを集めるとまた見えてくる(その2)

道具を集めた七つ道具は実にたくさんあります

 かき集めるという道具で、熊手をすぐに連想しました。この熊手を使ってかき集めようと考えたら、次にピンと来たのが「弁慶の七つ道具」でした。熊手、木槌、ナギナタ、大太刀などがあります。特に先端がU字になって長い柄の付いた道具は、刺股(さしまた)といい犯人などの首や手足を壁や地面に押し付けて捉える道具です。これはどこかで見たようなマークだったことを思い出し、学生時代の地図帳を引っ張り出しました。地図のマークにあったのは、「消防署」のものでした。ちなみに警察は〇のなかに×、学校は文というマークでしたが皆さんは思い出せましたか?
 弁慶は力持ちだったようで、これを背負子と呼ばれる竹製の籠にいつも背負っていました。今でいうリュックサックのようなものです。このように1つのカゴやバックに仕事で使う道具をかき集め、それを持って移動すればその場で道具を探すことなく仕事ができ、素早く作業ができるようになります。代表的なのは、大具さんの道具箱ですが、これも大具の七つ道具と称されます。実際にはもっとたくさんの道具や工具が入っています。この七つ道具と称するものはたくさんあります。古くは大名行列の七つ道具、武士の七つ道具などがあり、最近では選挙の七つ道具、探偵の七つ道具、QCの七つ道具、アンコウの七つ道具(これは良き酒の友として欠かすことのできないアイテム)、さらにはサッカーの審判の七つ道具というものもあります。
 身近なところでは、ゴルフバック、非常用防災袋、化粧ポーチ(今や女性だけでなく男性も使っています)、プラスやマイナスなど色々なサイズのビットの入っているドライバーセット、ナイフや栓抜きなどが1つに揃ったアーミーナイフ、お医者さんの診察鞄、大工さんが腰に巻いている前掛け(ドンブリと言います)などが思い浮かびます。
 なぜこのような道具箱を携帯するのでしょうか?IE的に作業を観察しますと、一連の作業で道具、工具、部品、部品、書類などモノ探しに占める時間の割合は最低でも3割もあります。5S活動や改善の遅れている現場では、9割の時間がモノ探しだったという観察結果もあります。これらを1つの箱や袋に入れておけば、これらを探す手間が一気になくなります。
 電気工事の人たちが腰回りに取り付けている工具入れの腰ベルトには、ドライバー、ニッパ、ペンチなどの工具をセットできます。電柱に登ってから工具を忘れたので、地上まで取りに行くというムダな作業はプロとして絶対にできません。

この七つ道具の考えを現場改善に使ってみましょう

 著者が工場で改善をしていた時には、他の人たちと比べ改善のスピードが2倍以上もできていました。実は、この腰ベルトを付けて現場改善をしていたからです。たったこれだけで工具探しがなくなり、素早く改善に取り掛かることができました。
 さらに改善専用の鞄の用意、さらに予め使用する5cm単位にカットしたLアングルをサイズごとにセット化しておき、台車に載せておきます。ラインテープも各種取り揃えて専用の箱にセットしておくことで、即改善実施ができるように外段取り化を進めてきました。さらにネジのサイズをできるだけ共通化して工具も減らす工夫も考えると、探す、迷う、悩むというムダな時間をなくすことができ、付加価値を生む時間を生みだすことが可能になります。さらに市販の工具を少し加工して自分なりに使いやすし、道具化することもさらに作業効率やスピードを上げることができます。道具化とは、工具を改造してさらに使いやすくしたものを言います。
 お金を掛けないように工場をくまなく一斉に道具や工具を、全員が熊手となって使えるものをかき集めます。そして使えないものは廃棄し、修理できるものは手直しし、必要な個所に必要なだけ配布しておきます。余ったものは倉庫などにきちんと保管して、新規のものを買わないようにします。それだけもびっくりする金額になります。
 さらには改善する色々なグッズを取り揃えた改善台車、道具や工具をセットにした台車やオカモチも今ある台車などを少し改造するだけで準備できます。