虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第27回:手のひらを反してみましょう(その2)

さて次は手を見てみましょう

 手を見てみましょうと言いましたが、手の甲をまず見ましたか?それとも手を反して手のひらを見ましたか?あえて手を見てくださいというと、パッとひるがえして手のひらを見たかもしれません。不思議ですが、8割の人が手のひらを見てしまいます。
 普段はいつも手の甲を見ていますが、手のひらはほとんど見ることはありません。パソコンや作業をしている時は、いつも手の甲の側を見ています。見ているというより、眼に入っている状態です。手のひらを見る機会といえば、毎朝顔を洗う時です。水をすくっているので直接手のひらを見ているのではなく、屈折した状態であり、しかも眼をふさいでしまうので手のひらを見ることはありません。
 でも見ない代わりに、いつも物を触っているのは手のひらの方です。ちょっと触っただけでも、温度、表面の粗さ、質感など様々な情報を得ることができます。手のひらは、手の甲と違ってつるつるとしています。しかも産毛などの体毛もありません。
 手のひらを見るクイズを出しましょう。一緒にやってみてください。「左の手のひらを、10秒間見てください」、そしておもむろに「左手を握ってください」、さらに「右手でペンを持ってください」と続けます。「さて、問題を出します。手のひらを見てもらいましたが、大きく太いシワ(生命線、運命線、感情線、知能線など)が3から4本ありました。それを紙に描いてください。よーい、どん!」というと誰もが困った顔になってしまいます。
 毎日見ている自分の手のひらです。腕時計は時々付け替えることがありますが、自分の手は変えようがありません。しかも生まれてからずっとこの手を見てきました。描けなかったと思います。お手上げ状態だったと思いますが、大丈夫です。誰もきちんと描ける人はいないのです。じっくり見ながら、太いシワを描いてみてください。今度は手のシワを意識してみるのですから、こんな風になっていたのかと観察する力がまったく違ってくるものです。
 では次の問題を出しましょう。今度は、人差し指を出して下さい。これも10秒間見てください。さあ10秒経ちましたら、指を畳んでください。ここで問題です。「人差し指を見てもらいましたが、今度は第一関節の指紋が描けますか?」これも描けませんね!なぜでしょうか?きっと関節のシワの数を数えたのではありませんか?

手をひるがえし、問題を握って解決しましょう

 先入観とは恐ろしいもので、先に自分で問題を作ってしまったのです。なぜでしょうか?著者は、すぐに答えを出そうとしている学校教育にあるのではと感じています。固定観念や先入観を持ちすぎると、見えるものも見えなくなるものです。
 両手を相手に差し出すようにすると、相撲のツッパリの形つまり「プッシュ」になります。会社のなかや組織間、部門間の問題もこのようにして相手に押し付けた格好にしています。棚上げ状態の問題はどこにも引き取られませんので、問題は段々と腐っていきそのうち爆発してしまいます。他責にしてしまうと、問題は一向に解決しません。
 手のひらを反して自分の方に向けてつまり「プル」の形になりますが、その問題を握って自分に取り込みます。自責にして取り込むことで、問題の半分は解決したと考えても良いでしょう。逃げるから捕まえるという姿勢が、問題を小さくして解決しやすくするのです。心理的なことですが、ちょっとしたことで状況を一気に変えることができるのです。前向きに捉えるとは、手のひらを反すといったほんの少しのことなのです。