虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第21回:ベートーベンはコーヒー豆をいつも数えていた(その1)

コーヒー1杯に必要な豆の数はいくつでしょうか?

 2000年から欧州で、コンサルタントの仕事に携わっています。ドイツを中心に今までに12ヶ国を回って色々な企業を訪問し、鳥取の田舎から年間約25万kmの移動をしていました。3年前に渡航は止めましたが、まだ珍獣ハンターノイモトアヤコさん(彼女は、鳥取県大山町出身で、自宅から車で約40分のところにご実家があります)には、移動距離はかろうじて勝っています。企業においては歩行のムダを指摘していますが、本当は私自身の方が断然歩行(移動)のムダが多いのです。
 ドイツ人が一番飲んでいる飲み物は何でしょうか?頭にすぐに浮かぶのがビールです。でも答えはコーヒーだったのです。しかもビールの1.5倍も飲んでいるのですから、この答えにびっくりしたことがあります。そういえば、ドイツのホテルの朝食は、まずコーヒーであり、その後企業訪問すると必ずコーヒーと炭酸入りの水、コーラがセットになってできます。さらにクッキーやチョコレートも出て来ることもあります。
 彼らは何かとつけて、1日に数杯もコーヒーを飲んでいます。しかもほとんど人が、たっぷりの砂糖とミルクも入れて、スプーンでしっかり混ぜて飲んでいます。日本ではお茶しようといいますが、ドイツではお茶がコーヒーに相当し、このちょっとした休憩兼お喋りタイムを「コーヒー時間」といいます。
 さてコーヒー1杯に必要な豆の数は、あの作曲家のベートーベンは60粒でした。横に10粒、それを6列に並べて合計60粒です。60粒を綺麗に並べる作業をやってみますと、30秒は掛かってしまいます。それをまたまとめてミルに入れるとなると、1分近くの作業になります。
 これがムダかと言いたくなりますが、彼にとってはこれがコーヒーを飲むための儀式であって、ムダと思っていなかったはずです。カップで掬えば数秒で済みます。ただし、確実に60粒かといえ彼にとっては問題だったのです。音楽家は、ちょっとでも音が外れたりずれたりすることに対して、非常に神経を使います。彼の性格では、豆を必ず自分自身で60粒数えないとダメだったのようです。本当にマメでした!
 2020年はベートーベンの生誕250周年でしたが、コロナの影響で第九の演奏もできなくなっています。とても残念ですが、DVDでも観ましょうかね。
 これも余談ですが、ドイツ人を観察してわかったことが、ほぼ100%の人がコーヒーには必ず砂糖を入れます。そして、スプーンで拡販しますが、その回数はこれもくしくも13回が平均値でした。理由を訊ねると、これが習慣になっているので数えたことがないと誰も言います。

図1. 1粒ずつコーヒー豆をマメに数えているベートーベン
図2. 数えないで数えることができる事例:銭枡