日本の高度成長期の大量生産要求に対応するため、製造業は改善で生産スピードを上げ生産量を増やし、コストを下げて大きな成果をあげました。同じ製品を安く大量に造る時は、生産スピードアップの改善は効果的です。
しかし今のマーケットはより小ロットの生産を求めているので、このやり方だけでは対応しきれません。ところが、大量生産の時の成功体験が染みついていて、いまだに改善というとスピードアップという考えから離れられないでいる会社もあるのです。
スピードアップする改善とは、一時間に同じモノを50個生産しているのを、55個生産できるようにする改善です。一方、多品種生産時における改善は一時間に5種類のモノを10個ずつ合計50個造れるようにする改善です。これができるためには品種を変える時の段取り替え時間を短くしなければなりません。ところがスピードアップの改善で大きな成果をあげた高レベルの工場でも、段取り替えの改善となると一気に熱量が低くなっていることがあります。ナゼかと思い理由を聞いてみると、段取り替え時間は既に10分と短くなっており、苦労して9分にしても「たったの一分しか儲からない」といった理由が返ってきます。
しかし、段取り替え時間が10分から9分と一割短縮されれば、段取り替えの回数を一割増やせます。そこで生産品種を増やすことができるし、あるいは在庫に最も影響が大きい製品を選んでロットサイズを小さくすると在庫を減らすこともできます。これから多品種の方向になっていくとしても在庫を増やさずに対応することができるのです。
在庫を増やさず、それでも品切れを起こさない高レベルの多品種少量生産ができるようになることは、変化スピードが速いこの時期にとても大切だと思います。段取り替え時間の短縮は在庫削減と品種拡大の両方につながる経営的な改善なのでみんなで取り組みましょう。
今週の言葉 生産スピードを上げるより、段取り替えのスピードを上げよ。