からくりカイゼン 第17回

からくりカイゼンの10個の原理原則:音の原理

 からくりカイゼンの8つ目の原理原則は、音の原理を活用するものです。磁石と電気とも一緒で見えない原理です。音を出す物体が振動して空気に伝わり、音として聞こえます。

 音は空気の振動によるもので、製造現場では機械などの騒音等が問題になります。振動も人体の関節などにも悪影響を与えます。特にうるさいと言われる70dB以上の騒音があれば、健康にも影響がありできるだけ抑制しましょう。10dBは約2倍の強さの単位です。ちなみに聞くに堪えられない人間としての限界のジェットエンジンの音は、140dBです。

 高音が聞こえにくくなると、悪口が良く聞こえると言います。小声でささやくので、低音になり良く届くそうです。最近のイヤホンは、音ではなく振動を利用した骨伝導でも聞くことができます。風力発電機の回転時に発生する低周波は聞こえませんが、かなり遠くまで届き健康障害に影響しています。鯨同士の会話は、低周波ゆえに世界中でできます。

 振動を伝えやすい材料と伝えにくい材料を知ることで、音の原理の活用が応用できます。工場内の騒音防止に、段ボールとスポンジで仕切るとかなり減衰できます。さらにスポンジやナイロンのプチプチも、安価な防音と寒さ対策として応用しています。ゴムマットの代わりに段ボールを敷くだけでも効果があります。ただし汚れや摩耗粉の対策が必要です。

 段ボール屋の友人は、震災時にすぐに災害用として冷たい床から守るため組立式の段ボールベッドを開発しました。またコロナ禍で、段ボールで囲った一人用のカラオケボックスも商品化されたこともニュースになりました。色々応用ができますね。

 音を伝えにくい騒音防止用にガラス板があります。1枚のガラス板で約1/1000にすることができ、二重サッシだと約10万分の1にできます。最近では三重サッシも出ています。ガラスと空気で断熱効果もできています。
 さらに消音作用として、車やバイクのマフラーに応用されている方法があります。音が通過す管の断面積を大きくしたり壁を設けたりしています。くぼみや穴なども効果があります。

 車ではマイクで騒音を拾い、その逆の周波数の音を流し車内を静かにすることができています。これは、打ち消し音と言われます。高速道路の壁や車内の騒音削減、ヘッドホン、冷蔵庫、空調ダクトにも応用されています。工場内でも耳栓の着用だけでなく、作業環境の整備に応用して欲しいものです。

 その基のアイデアは、戦艦大和の喫水線下に球状船首と言う突起を設け、波を打ち消して表面積を少なくし船体の水の抵抗を減らして、速度を上げる仕掛けになっていました。音の原理原則を上手く活用した事例です。

(次回に続きます)