からくりカイゼン 第15回

からくりカイゼンの10個の原理原則:磁石を活用

 からくりカイゼンの6つ目の原理原則は、磁石を活用するものです。磁石は永久磁石と電磁石の2種類があります。磁石や磁気に関した製品は、モーター、羅針盤、電磁石、リレー、電磁弁、ホール素子、マグネットシート、磁石付きチケット(自動改札機で使用)、キャッシュカード、電子レンジなどたくさんあります。

 磁石は見えない力をもった石です。昔から不思議に思われていました。羅針盤は、大小の大きさに関係なくN極とS極のついた磁針で見ることができます。磁気は空気中よりも鉄心を通すと物凄く通しやすい性質があり、さらにシールド材(プラスチックなど)で覆うとさらに効率が良くなります。

 身近な携帯電話は、磁石の原理を使ったものが組み込まれています。カムを偏心させて振動させて電話の着信を知らせるのは、モーターです。またスピーカーも小型になってきていますが、強力な磁気をもつネオジム磁石のお陰です。最近では、入歯の固定する治療にも磁石が使われて、以前はネジ込んで固定していましたが面倒な治療も簡単になっているそうです。

 身近な事例は、電気炊飯器でご飯が炊けたら、その熱で磁気を失いオフになる仕掛けです。これは永久磁石の応用したものです。以前の会社でサーマルリードスイッチを使って、ブルトーザのラジエターのオーバーヒート防止スイッチを設計したことがありました。

 ロシアのシベリア仕様で、いったんエンジンを掛けたら凍結しないように半年間はエンジンをかけたままにするそうで、びっくりしたことがありました。エンジンの振動で共振しスイッチのリード線が切れたことがあり、完全に固定するように樹脂で埋めて対応しました。

 電磁石の応用として、鉄粉を吸引させるなど電気をオンオフすることで、吸引と吸着を行うやり方があります。小学生の時に釘に紙を巻いて、さらにニクロム線を巻いて、電池につなぐと他の釘を吸引する実験を思い出します。

 からくりカイゼンでの磁石の利用は、直接にはあまり見ることはありません。良く使われるのは、スパナなどの工具を取付るやり方です。また、鉄製のフタの開閉する時に簡単に吸引させることができるので、蝶番などが不要になります。機械的に固定はしませんが、仮固定のような状態では磁石は便利です。

 最近の磁石で強力な磁気をもったネオジム磁石は、百均の店でもいろいろなサイズで売られるようになりました。3Ⅾで作った樹脂の小物箱などの取付に応用されています。

(次回に続きます)