からくりカイゼン 第14回

からくりカイゼンの10個の原理原則:浮力と圧力を活用

 からくりカイゼンの5つ目の原理原則は、浮力と圧力を活用するものです。これも主に4つの原理があります。

 ➊重いものを動かすパスカルの原理(17世紀に発見)は、液体(あるいはガス)が密閉され静止した状態で成り立つ原理で、あらゆる接地面の圧力が等しいと言うものです。

 大きい注射器と小さい注射器をチューブでつないで、それぞれ押し込むと小さい方が小さい力で大きな注射器を押し戻します。油圧装置の原理です。油圧ポンプの片方の断面積が10倍であれば、他方の力は1/10で済みます。ただし押しのけるストロークは、テコや滑車と同じように10倍必要になります。

 身近な事例としては、油圧ショベル、ショックアブソーバー(ダンパ)、昇降機能の付いた椅子などがあり、これは重いフタを持ち上げる補助機構の動力源として使うと便利です。

 ➋毛細管現象は、毛細管の隙間に液体が外部からのエネルギーなしで移動する現象です。(ダ・ビンチの時代に発見)。応用編は、万年筆、刷毛、雑巾、ろうそくなどがあります。現場では、チェーンに油を布で供給することに使われています。芳香剤の芯にもよく使われています。

 ➌サイフォンの原理です。これは紀元前1500年頃にエジプトで、既に使われていた原理です。管に液体を充填させてから低い位置の方を開放すると、高い所から自然に流れ出ていく原理は大気圧によるものです。良く思いついたと感心します。

 家庭では、灯油タンクに供給する灯油ポンプに使われています。高低差があれば、動力なしで液体を移動させることができます。洗面台の下にある排水トラップもこの原理で、配管からの臭いの逆流を抑えます。

 ➍アルキメデスの原理です。これは、アルキメデスが発見した“てこの原理”とともに偉大なからくりの原理です。物体の押しのけた液体の質量と同じ大きさで浮力を受ける原理です。金の王冠が本物か偽物かを判定するために、天秤にぶら下げてバランスを取ってから、王冠と同じ金塊を水に沈めると王冠の方が浮いて不正がわかったと言う有名な話です。

 応用したものは、やはり重い鉄の物体である船が海に浮かんで航行できる船でしょう。後は浮力を利用した浮き球(フロート)があります。トイレのタンク内にも隠れていますが、浮き玉の上下で一定量の水を溜めることができます。また水溶性の切削油で研磨した材料(切削粉)を濾紙(ろし)で濾す時に、溢れないように浮き球にスイッチを連動させて調整します。

(次回に続きます)