からくりカイゼン 第12回

からくりカイゼンの10個の原理原則:動きの方向を変える機構 その2

 からくりカイゼンの4つ目の原理原則は、動きの方向を変える機構です。前回はカムの紹介をしました。➋番目は、複雑な動きを伝えるリンク機構です。リンクとは、通信ではつなぐと言う意味ですが、この場合は節と訳されます。クランク機構は、クルクル回るものです。この機構は、19世紀になって考えられたものです。てことは、大違いです。

 リンク機構は、棒状のものを回転自在のピンなどで連結して組合わせ、各部分の動きと位置関係が1つに決まるようにした機構を言います。リンク機構ですぐに頭に浮かぶのが機関車の車輪とその駆動部です。また自転車で乗っている姿も同じ原理です。人の場合の棒は骨であり、回転自在のピンとは関節部になります。

 機構としては、4つの節を組合せピンでつなぎます。機械的に一定の動きをすることが精度的にも良いので、1つのリンクは固定して、あとの3つのリンクを回転させる方法が良く使われています。1つのリンクにある動きを与えると、残った2つが決まった動きを伝えることができます。

 4つの節の長さを色々組合せることで、図解で示すように代表的な動きを紹介します。


 図1は、てこクランク機構、図2は両クランク機構、図3は両てこ機構です。電車のパンタグタフ、昔製図で使った平行定規(ドラフター)自動車のハンドルに連結して方向を変えるために使われています。

 回転自在のピンも色々あります。ピンタイプは、軸受け、ボルト継手、リベットなどがあります。また直線の往復の動きは、ピストン、シリンダー、リニア軸受けなどがあります。機構の負荷に応じて組合せを考えましょう。

 この動きを利用したピストンクランク機構は、回転運動を直線の往復運動に変えるものでまさにガソリンエンジンの機構です。その逆が蒸気機関車のピストンの伸縮運動を車輪の回転に変える機構です。

 筆者が好きな機構として、図4の倍力機構と呼ばれる機構があります。トグルプレスと言う名で商品化されています。単純な機構ですが、大型プレスが裁断機に応用されています。A4トレーの大きさで1~2トンの荷重を生み出します。ストロークは短く4cmでしたが、数百台導入し1台の故障もありませんでした。

 欧州で操業100年以上の工場に訪問した時に、製造年を観たら106年前の高さ2mの現役トグルプレス機がありました。機構が単純なので、長寿命です。

(次回に続きます)