脱力・カイゼントーク 第7回

カイゼン指導をして会社が良い経営成果を出せるようになることが、コンサルタントである私の最高の喜びです。生産性向上によるコストダウン、品質向上によるクレーム減少、そして5Sによる空きスペースの確保などです。これらのカイゼンとその成果の関係は非常に分かり易く、常に追求するべきテーマであるといえます。

一方、どのような成果に結びつくのかが分かりにくいカイゼンや、常に正しいとは言えないカイゼンもあります。例えば、「在庫削減」はまさにそのような分かりにくい面の多いカイゼンです。

A社の経理は社長のお母様が担当しておられます。カイゼンを導入してしばらく経ったとき、お母さまが社長に「最近は材料や部品の購入が減って資金繰りがとても楽になってありがたいけれど、このまま行くと売り上げが減るんじゃないの?」と心配されたそうです。社長はお母さまに「在庫が減ったのは、作り方と買い方をカイゼンして、不必要に多かった在庫を減らした結果です。生産量は減りませんし、むしろ取り置きや運搬が減ったので、生産性と生産能力が上がって、売り上げも増やせそうです」と説明しました。この会話は在庫に関する理解の複雑さを示しています。

在庫削減のカイゼンはお客様に影響を及ぼさない範囲で行うと経営効率を向上させます。しかし常に在庫削減を推進することが正しいかというとそうではありません。最近でいうと、コロナ禍による都市封鎖や材料供給の途絶、そして円安による購入価格の高騰など、予期せぬ出来事が突然起きました。こういう場合は在庫を早め多めに調達することは避けられません。基本的な考え方は変わらなくても、環境の変化が速くこれまでのように先が読めない時代では、いろいろな情報を取り入れながら臨機応変に対応できることが必要であることは言うまでもありません。

「在庫削減」はかなり複雑な面をもったカイゼンです。モノを作る立場からすると、在庫があることで急な事態にも対応しやすく、後工程やお客様にご迷惑をかけることを避けられます。そのため各工程で少しずつ在庫持つようになりがちです。しかし良かれと思っての対応も、その判断が行き過ぎると結果的に在庫は増えていき経営を圧迫します。在庫をどのように取り扱うかはとても複雑ですが、適正在庫といった言葉もあり、更なる研究が必要です。この件については次回お話ししたいと思っています。