ヒューマンエラー対応の職場づくり 第4回

4. 職場の作業環境の乱れが規律の乱れに

 職場に余分なものがあり過ぎるから、混乱して何もできないのです。普段気づないことや見えないことを、誰が見てもわかるように「見える化」することです。異常があればすぐに行動し対処することを、職場全体で習慣化することが大切です。

 まず職場を毎日清掃して、汚れを拭き取りキレイに元の状態にすることです。原因や真因がわかり、再発防止策も考えて対処する習慣を身につけていくことです。時間はかかりますが、その効果は想像以上です。

 この清掃という基本を再徹底していきます。当たり前のことを当たり前に毎日やることはとっても難しいことなので、個人プレーでなく全員でやるようにします。

 基本を習慣化することで、慌てるような状況でも、迷わない、探さない、考えなくてよい、相談しなくてよいなどのムダやミスもなくせます。これらがなくなれば、誰でも同じように作業ができるようになり、品質も時間も生産性も“バラツキ”が少なくなり、いずれも向上します。

 事例として、あるデスクワークの人の最上段の引出をご覧ください。【写真1】
引出しの中にトレーがあり、たくさんの文具があります。事前にトレーの下に目立ったミッキーのボールペンを確認しました。

 席を外していた担当の女性に、「ミッキーのボールペンを貸してもらえませんか?」と訊ねました。「ええ、私もっていたかな?」と引出を開けてゴソゴソと探しました。「ありませんねえ」、「そうですか?あるはずですよ」。

 ゴソゴソもう一度、「やっぱり、ありません!持ってません!!」と強い口調に変化。「では、その中のトレーを持ち上げてくださいね」、「ああ、あった!」と一変に苦笑い。全く使っていない文具が7割以上もあったのです。

 まるで引出そのものが死材?置き場だったのです。引出だけでなく職場が乱雑だと、探す、迷う、再確認、イライラするなどのムダが発生します。それは、結局ミスの引き金を引いてしまうのです。環境整備はとても大切なことですが、毎日見ているものやムダは見えなくなるのです。

 そこで事前に用意していたボードを出して、使う頻度の多い順に並べ替え、さらに表示標識も実施してもらいました。すぐに要らないものは、別な場所に移動してもらい、社内の文具をすべて集めて、これから使うもの、使わないものの基本の合意を取ってもらい、使うものはカンバンで発注する方法に切り替えました。

 文具は生産現場では、工具に相当します。使いやすくしかも安価、入手しやすいものなどを皆で検討することで、標準化が進んでいくとともに作業環境も整備できます。この皆で合意を取ることを、「共通の言語化」と言います。

 頭で考えていることは、他人にはわかりません。言語化することで、何をどうしたいのかがお互いに伝わり、カイゼンをどうすればよいかも見えてきます。5Sと目で見る管理を一緒に行うのは、誰がやっても“バラツキを抑えること”と考えます。

【写真1】 カイゼン前の引出の姿


【写真2】 カイゼン後の引出の姿、表示標識もセットになっている