ヒューマンエラー対応の職場づくり 第3回

3. ミスが多くなると慌てる

 ヒューマンエラーのほとんどが、些細なこととその積み重ねによるものと紹介しました。人はお尻に火が付かないことには、即行動しない動物です。お尻に火が点けば、慌ててしまい普段の行動ができなくなり、ミスにつながるものです。まるでイタチごっこ、モグラたたきと同じことの繰り返しになってしまいます。

 処置だけでなく、そのミスを繰り返さない根本対策も同時に行う必要があります。これは、オペレータレベルの対応ではなく、リーダーやマネージャー、さらには経営者の責任範囲にあると考えます。

 ヒューマンエラーによるミス(以降「ミス」と総称します)が発生すると、慌てて元に戻そうとする心理が必ずオペレータには働きます。いわゆる手直しや復旧作業です。通常の作業のタクトが1とすれば、手直し作業はその3倍以上の時間を要します。

 つまり、再検査、悪い部品やミスを除く作業、新たにパーツを交換し再度作業をして、さらにもう一度検査もすることになるからです。

 このように決められた時間以上に時間を消費してしまうから、なおさら急いで作業をしてしまうから、慌ててしまうのです。冷静な判断力、手順通りのステップや時間と言った標準作業からは逸脱せざるを得ないのです。悪魔のサイクルと呼んでいます。

 この時に発生するのが、不安全行動、不遵守行動、危険行為、ヒヤリハットなどがあり、職場の安全が確保できなくなります。これが製品やサービスになると、手直し、不良、クレームなどの品質の低下です。結果として、ムダ、ロス、信用の欠落になります。

 普通の職場では、慌てて手順を飛ばしたり、やってはいけない操作をしたり、パニックになって大きな声で叫んだり、とても冷静な行動や判断はできなくなってしまいます。

 手直し作業を周囲の状況を把握して、手順通りに処置を行うことはごくまれのことです。余程普段の訓練が、できていない状況では無理なことです。まず止めること、そして第三者を呼び出すことです。

 このようなミスが発生しやすい職場の共通点は、5Sが乱れており、また目で見る管理のルールやアクションの基準がない、あっても守られていない職場なのです。

 逆にその職場に一歩入っただけでも、見た目もスッキリ、整理整頓が整い、床もきれい、人もキビキビを働いておられるいわゆる“魅せられる職場”には、ミスの発生因子がすぐには見つからないほど素敵です。