ヒューマンエラー対応の職場づくり 第15回

15. モノの置き方だけでムダが6割もある

 組立系の工場においては、経験上ですがモノの置き方だけで6割のムダが発見できます。工場内には今使うべき設備や機械以外にどれだけあるか、今生産すべき1オーダー以外の在庫や仕掛がどれくらいあるかという観点で見ていくと、ムダだらけになります。今日要る分だけにしてしまうと、フロアが半分から1/3以下になってしまいます。残念ですが、ムダの認識やムダが何かと知らないとまったく気づきません。

 今使わない設備や機械、さらには治工具、仕掛品、中間品、材料などが、使われない死蔵品置き場に変身し経費を消費します。スペースや空間はタダではありません。

 置き場になっているスペースは、1㎡あたり年間に約1~3万円の費用が掛かっています。ましてや間接部門の費用はその数倍以上かかっていますが、意識したことはありますか?

 また1品あたりの1年間の管理費用は、どれくらいかかっているでしょうか?毎月の棚卸費用、データのIT費用、スペース費用、場合によっては再検査費用や廃棄もあります。電気機器関係だと1品あたり年間数万円、自動車関係の部品では数十万円と言ったところでしょうか。必要なモノだけにすると、迷いがなくなりミスも誘発しなくなります。

 欧州の企業では、総在庫仕掛金額の3~4割が管理費用で消えていくことを納得してもらいました。危機意識をもってもらい、不良手直しをなくし、品質向上の活動を強く推進してきました。

 必要なモノだけ、具体的には1オーダー単位で配当すると、品質のフィードバックが速くなり、納期遵守も向上してきます。ピッキングから加工、組立、検査、梱包、出荷までの製造リードタイム短縮に注力してきました。品質が良くなると納期が守れるようになり、結果として生産性が向上しコストダウンができます。

 残業もなくなれば、残業代も動力費など大幅に経費削減ができます。同じ人員で製造リードタイムが半減すれば、売上は2倍にできます。利益は4倍以上になります。

 逆に残業代を製品単価に上乗せして客先に請求できませんので、賢く生産計画、生産活動をして残業なしにしましょう。残業代は、製造原価を押し上げ利益を減らします。

 筆者は、工場の管理部門で、転職までの3年間を部下も含めノー残業を励行してきました。やると言う強い意志を持てば、仕事の工夫をするようになり達成できました。間接部門は、やり方を変えることで残業を大幅に削減可能になります。部下育成、多能工化、修羅場を経験させるなどは、人財育成の王道です。