ヒューマンエラー対応の職場づくり 第11回

11. ヒューマンエラー対策の原則:環境整備その1

 5Sと目で見る管理の2つで何をするのかと言えば、“バラツキを抑えること”だと考えます。誰が作業をしても、同じような結果が得らえるように作業環境を整備します。

 異常があればすぐに検知して、ルール通りにアクションを取り正常に戻すことです。ミスを少なくしさらになくしていくには、常に職場の環境をスッキリと整えておくことです。そうすることで慌てなくて済みます。

 オペレータの目の前に、最低限の必要な工具と部品とそれを支える治具があるのが理想だと考えます。そして、同じ作業が繰り返しできるように標準作業ができるように、環境を維持しカイゼンができるようにします。

 ヒューマンエラーの原因のほとんどが、些細なことが積もり積もって発生しています。その些細なことのゆえに、何も感じない、何も考えない、何も対策を取らないことで、粉塵爆発のように一気に事故や災害になっていくと考えます。

 知らなかったからなぜそんなことになるのかを想像もしなかった、知っていたつもりだったがその時は忘れてしまった、思い込みだったなどの原因があります。しかし、行動を起こす前に、不要なモノがいっさいなく、また汚れやホコリがなくキレイで見やすい表示標識があれば、ちょっと確認することで、ミスをすることが大抵は防ぐことができるのです。

 5Sと目で見る管理の乱れがあると、ミスの発生因子になって行きます。作業環境の整備は、人体と同じように自律化したシステムでなければなりません。風邪をひくと熱を出して、白血球を増やしてウィルスをやっつけることを人体ではできています。しかし、人のつくった組織はこのように、上手く機能ができないのが普通です。だからこそ、すぐに対応できる環境整備が必要なのです。

 事前に知ること、わかることができることで、多くのミス防止が可能になります。それが、5S+表示標識のやり方です。これはコストも時間もかからないので、見積りも稟議書も必要もなく、職場の合意だけで即実践できます。

 まず「記憶力よりも、記録力が大事」として、必要な個所に的確な表示標識をして、ミスの発生を事前に踏みとどめましょう。モノや情報があり過ぎては混乱しますので、「整理→清掃→整頓+表示標識」をして環境整備して、効果が出やすいようにしておきます。

 その最たる表示標識の事例と考えるのが、ゴミ箱の位置表示です。これを最初に見た時は、ガーンと脳に衝撃を受けました。ゴミ箱の「▼」マークと床の「▲」マークを合わせるというとても単純なものです。しかし、人の心理を上手く利用したアイデアで、少しでもずれると合わしたくなる心理になります。【写真】

 これをパソコンで作り、ラミネート処理して両面テープで貼り付けします。普通にゴミ箱の位置表示は、直径約25cmの周囲を囲みますので、約140cmになります。ところが、この▼▲マークは、8cm幅ですから、合計16cmで済みます。

 しかも貼り付ける前は、はがれないようにキレイに清掃が必要です。テープ代、掃除と清掃の工数、そのあとはがれた場合の手直し工数は、比べることができないほどの効果があります。

【写真】 ▲マーク