脱力・カイゼントーク 第36回

設計変更 現場チェック

ゴム材料加工のJ社から問い合わせがありました。「ある商品の受注が伸びていて増産をしたいのですが、その商品を作る部門の場所が狭くて設備拡大の余地がなく、困っています。カイゼンで問題解決ができるのでしたらコンサルティングをお願いします」ということでした。

早速、工場に伺い現場を拝見しました。実際に工場を見て回ると私の予想に反して現場はきちんと整理整頓されており、不要なモノが溢れて場所が狭いということではありませんでした。ここで作られている製品は金属部品とゴム部品を接着したシンプルな構造でしたが、製造工程は意外にも複雑であり、多くの設備がスペースを占めていました。

工程の内訳は、接着力を上げるために金属の表面を加工するショットブラスト工程、その工程で発生した廃棄物を取るための洗浄工程、洗浄で付着した水分を取る乾燥工程がありました。また次の接着工程も2種類の接着剤を2工程にまたがって塗布しており、さらに最初の接着工程では接着剤を塗布した後、乾燥炉を使用して接着剤を乾燥させていました。この乾燥工程はロット生産で行われ、大きなスペースを必要とするだけでなく、出し入れの手間もかかっていました。このように、乾燥や洗浄で多くの場所が取られていたため作業スペースは狭く、作業者にとっても非常に働きづらい状況でした。

その時のカイゼン会には製造部門だけでなく、営業部門や技術部門の人たちも呼んで、私は皆さんにいろいろ質問をしました。まず、2種類の接着剤を使っているが、1種類で乾燥させないで使える接着剤に変更はできないものかと問題提起しました。すると技術部門から、そのような性能を持った製品はあるが、材料や加工方法はお客様の指示で作っているので自分達では決められないとの答えが返って来ました。

営業部門の方に変更の可能性を聞くと、すぐにお客様の所に電話をかけてくれました。するとありがたいことにその場で先方から設計変更に関する承諾の返事をもらえました。ちょうどお客様も接着剤の変更を検討しており、たまたま当該製品についても設計変更を検討していたということでした。そこで工場長に変更を依頼して塗装工程を2工程から1工程に減らす決断をしました。

翌月、再び工場に伺うと、2工程用の接着剤から1工程用の接着剤に変更され、その結果、半分の接着作業台がなくなり、乾燥炉も除去されていました。この変更により、本来の目的であった設備拡大のためのスペースが生まれたわけですが、もう少しカイゼンをすることで何か別のいいアイデアが出てくるのではないかと私の中に希望が生まれました。