カイゼンとは? 第七回

カイゼンの基本7 ~空いたスペースは何に使うの? 2~

今回は空いたスペースを具体的にどう使うかについてお話しいたします。5Sや在庫整理をして不要品を廃却したりすぐ使わないモノを移動したりした結果、工場の中にこれまで無かったスペースが生まれました。活用方法は様々ありますが、一番多いのは、「ここに何を置こうか?」と考えて、とりあえず製造中のモノや材料などを置いてしまうことでしょう。これまで置き場所がなくて困っていた別部門の人たちが、ここぞとばかりモノを置いてしまい、空きスペースが埋まってしまうといったこともよくあります。空きスペースはその使い方を前もって考えておかないと、あっという間に埋まってしまいます。

せっかく生まれたスペースに何かが置かれてしまっては、それから先のカイゼンはできません。先回15ゲームの例を使ってご説明しましたが、空きスペースは次のステップに飛躍する手段として使うと大きなパワーを発揮しますが、単なるモノを置く場所として使ってしまうとそこで進歩は止まってしまいます。

そこで、この空きスペースを使って、全体の流れをスムーズにすることを考えたいと思います。5Sや在庫整理で空いたスペースを上手に活用することで、新たな可能性が生まれることを期待しているのです。つい最近にあった事例をご紹介いたします。

プレス板金加工のA社では、最近受注した自動車部品の生産立ち上げがスムーズに行われず、日々の生産達成が厳しくなっていました。製品サイズが大きくなったため場所が足りず、部品の供給や段取り替えがスムーズにできなくなっていたのです。中間品も建屋内には置ききれず、外部の倉庫を借りる計画も立てていました。そこでカイゼン会の時に、参加者で不要品の廃却をして場所を空ける5S活動を行い、4パレット分程度の場所を空けました。

供給担当者はその場所を中間品置き場にして、それまで下屋に置いていた中間品の一部を移動しようと提案しましたが、4パレット分程度の中間品の移動では大した効果を望めません。固定の場所を作るのではなく、流れを良くするためのスペースの使い方を考えようと提案し、その場で議論をしました。生産状況を観察すると、置き切れない中間品などがバラバラに置かれているため供給者が必要なモノを見つけることができず、供給が遅れる現象が出ていました。そこでその空いた場所を中間品の供給拠点として、次に使われる中間品をその場所に見えるように生産順に置くことにしました。その結果、これまで供給が間に合わずラインが停止することが頻発していたのがスムーズに流れるようになり、当面の課題であった生産遅れ問題を解決しました。

更にその供給状況を見ると、各設備の近くに台車が置けず、作業者は毎回の部品の取り置きが大変で、設備レイアウトの問題があることが分かりました。そして一部の設備の並び順を変えると台車を介さずに直接に次のプレス機にセットできるのではないかというこれまで思いつかなかった発想も生まれました。

このようにして、空きスペースを単なる置き場所として使うのでなく、流れの最適化の追求をするために使ってみることが有効です。A社では中間品置き場を試しましたが、その結果、設備レイアウトの問題発見に至りました。こういった作業を通じて流れを良くするということがどういうことかを学べます。これまで当たり前と思っていた設備のレイアウトや物流の経路といったことに対して、ちょっとでも場所を空けて試してみたら更に生産の大きな流れに対するアイディアが生まれました。次回は作業者一人ひとりの作業の小さな流れについてお話しします。