プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第147回

プロジェクトのゴールはどのように見えるのか DX時代の命令(その7)

前回は、5S活動において4Sから5Sの間にあるギャップは大きいというところから始めました。つまり、清潔な職場環境とともに規律ある組織を獲得することはかんたんではありません。また、職場(チーム)の規律と組織(企業全体)の規律は必ずしも一様では無く、職場によってかなりのバラツキがあることも述べました。バラツキのひとつとして、職場のベテランやリーダークラスにおいて規律に従わない姿勢や行動がある場合にどう対処すべきか、命令的なコミュニケーションよりも5S活動による規律が対処のカギになると説明しました。それは、ヒトの行動や姿勢ではなく職場の状態にアプローチすることでした。それには、まず上司から部下への指示や命令はなるべく最小限にしたいという前提がありました。そのためにヒトの行動や姿勢ではなく職場が清潔に保たれているという状態にアプローチするのが得策ではないかという考え方に基づいていました。

今回はこの続きです。前回のようなアプローチがすべての状況に万能ということではありません。
アプローチの対象として、ヒトの行動や姿勢なのか、あるいは職場の状態なのか、それぞれのやり方の特徴について述べることにします。

【1】風通しの良い組織
ここで一般論として風通しの良い組織について考えてみます。職場で誰でも発言がしやすく、コミュニケーションが活発である、従って人間関係も良い。こういう職場のことを指しているのでしょう。このような職場であれば、4つのスタイルのどの命令であっても違和感無く運用されることでしょう。もちろん、命令における上司の意図について部下がその任務について誤解して実践することは起こります。そのようなときでも、風通しの良い職場であれば誤解がわかった時点で実践した任務を修正するなり追加の対処策をとることができます。従って、誤解はあっても基本的には修整されますから問題の影響が大きくならないようにすることができます。つまり、命令は円滑に実践に移行させることができます。風通しの良い組織は万事がうまくいき、悪い方へは行かないようになっていると言えるでしょう。

【2】風通しの良くない組織
これは、上記の逆になります。発言がしにくくコミュニケーションが活発とは言えない。従って、人間関係も良くない。企業のトップがこのような状況を容認することはありませんが、気づかないことはあります。職場のリーダークラスがかねてから何かと反抗的な姿勢や態度があれば、気づくことができます。しかし、面従腹背ということもありますからなかなか気づくことができません。そういうリーダークラスの人物は、他のメンバーに悪影響を与えます。悪影響としては、例えば体調不良や病気欠席などが増えることです。究極は退職したいという要望があって、ようやく悪影響を与える人物の存在に気づかされることもあります。社内に「目安箱」のようなものを備えることもできますが、これも諸刃の剣で良いことばかりではありません。また、職場の風通しの悪さは特定の人物だけが原因ということでは無いことも多いのです。従って、先ずは風通しの良さ、または悪さをどう感じるか、どう測定するかがポイントになります。現場を巡回するなどは良いやり方ですが、企業トップにそのような時間が必ずしも割けるとは限りません。やはり、企業内のルーティン業務から感じること、あるいは測定できることが欠かせないでしょう。

【3】コミュニケーションプロセスのチェックや見直し
組織内の定例会議など、DX化以前のこととして会議時間の短縮は欠かせません。基本は会議の役割を、その会議ごとにきちんと決めておき論議が発散しないようにすることです。オンライン会議であれば「せっかくこのメンバーが揃ったのだからついでに・・」などと会議時間が延びることを避けられます。コミュニケーションとして報告資料も重要です。例えば、品質会議の報告資料などはいざというとき、社外に提出し開示することも考えられます。ここでも組織の風通しの程度が明確に表現されることになります。会議の出席メンバーとして、例えばいつもは管理職だけであれば、定期的に現場のリーダークラスを組織ごとに順次参加させることなどもコミュニケーションプロセスのチェックや見直しに役立ちます。会議のやり方や会議資料の内容や構成についても同様です。もちろん、いかなる社内資料も継続性という観点は欠かせませんから、変更や見直しには相応の根拠が必要なことは言うまでもありません。これらを含めて、つねに「このままで良いのか」という姿勢や観点をもつことが習慣化されることになります。このような習慣化は決して命令ではありませんが、それを上まわる組織の規律として機能することになるでしょう。