現場カイゼンレポート 第十一回

オーダー品を標準品に変えて売り上げを上げた事例

A社は恒温槽を作っていましたが、数年間にわたり赤字が続いており抜本的な対策が必要な状態でした。原因は出荷の遅れと品質不良による手直しが多いことでした。詳細を調べると、営業が受注の都度お客様の要望を詳細に聞き、その内容に添って毎回新たに設計をしていたので時間がかかり納期が遅れ、初めて作ることが多いので習熟が進まず不良も多くなっていたのです。そのためせっかく注文があっても納期を確約できないため、引き受けられない機会損失も発生していました。

設計工程は注文確定後の第一工程であり、ここが遅れると以降のすべての工程に悪影響が出ます。逆に第一工程が短縮されると、すべての工程にゆとりが生まれ品質と納期とコストに好影響が出ることは明らかでした。

社長はお客様の要望をすべて聞くのではなく、あらかじめ製品ラインナップを標準化しておき、その中から選んでもらうようにすればよいと考え提案しました。当初、営業はそのやり方では売れないと思っていたのですが、社長の勧めで、先に標準品の販売に切り変えて成功した他事業部に話を聞き更にお客様にアンケートを取った結果、実はお客さまにとって大切なのは使い勝手にかかわる扉の形や設備の大きさであり、温度範囲や熱容量などの本体機能は要求が満たされるのであれば、標準品から選ぶので十分と考えていることが分かりました。お客様は営業担当者に希望を聞かれるので要望が増えていたのだということが判明しました。

そこで、お客様が求める本体の大きさ・形や扉の位置などはご要望を聞いて設計するが、本体機能はあらかじめいくつかの標準パターンを設計し既製品として品質保証されたものを用意し、そこから選んでいただくセミオーダーの仕組みに変更しました。

その結果、設計にかかる時間が半分以下となり出図が早まり後工程に時間のゆとりが生まれ、標準化され品質が高い部品が既製品として準備できるようになり、納期と品質の問題が解決し同時に生産性も向上できました。生産リードタイムが半減し納期を確約できるようになったので注文を断るようなことがなくなり、受注増と、利益増を達成しました。お客様の真の要望は全てをカスタムで作ることではなく、使い勝手の良い高品質の商品であったことを発見したことによるカイゼンです。