モノづくりの現場探求 第二十二回

安全対策2 再発防止

先回、安全対策の1回目として、ハインリッヒの法則と人間の意識フェイズについて解説をして、人間は基本的に間違いを犯すものであるということと、大災害は軽微災害への対応次第で防げる可能性が高いということをお話ししました。
今回はそれを前提として、再発防止の対策に役立つカイゼンのお話をしたいと思います。

約40年前の事件ですのでもう時効ということで話しますが、ある会社で機械に指を挟まれる事故が起きました。幸いにも大事故には至らなかったのですが、1つ間違えれば重大事故になった可能性もあり、会社が組合に事故の状況の説明をすることになりました。会社と組合の双方の幹部が現場に集まり、事故に遭った人の上司である課長が当時の状況を説明しました。私もその場にいたのですが、設備を止めずにその時と全く同じ状況で説明を開始し「このような状態で指をこの位置に」と言いながらその動作をした瞬間、「痛てー!」と大きな叫び声があがりました。私の目の前で全く同じ事故が起きたのです。

作り話のようですが、本当の話です。事故が起きる状況で、起きるようなことをすれば、必ず事故が起きるということを見事に証明してくれました。2人も続けて怪我をしたのですから即座に手が入らないようにする安全カバーが付けられました。部外者だった私が見てもそのカバーは良くできており、なぜ最初から設置しなかったのかと思ったものでした。人間ですから注意をするだけでは安全確保に限界があり、設置可能な安全カバーは確実に事前に設置するべきだと思いました。

事故の再発を防止するために、原因を追究し対策を打つのが再発防止ですが、上記の例にあるように、起きた事故の原因や経緯、重大さなどの情報は、対象となる人にとって再発ではなく初めてのこととなります。事故の重大性知識としてしか知ってはおらず、十分な注意力が働くとは限りません。人間は時に間違いを犯しますので、いくら事前に厳重に注意をされたとしても、忘れてしまうことも十分にあり得ます。発生した事故に対する再発防止を確実に行うためには、言葉や表示による注意だけではなく、事故にならない安全カバーのような物理的な対策が必要だということが分かります。

しかし時にはそれらの物理的対策が不可能なこともあります。場合によっては表示などの注意喚起だけしかできないこともあります。十分な対応ではありませんが、それでも実行することが正しいと思います。事故は人の注意によって防げることも事実だからです。その場合、注意する方法は文字だけでなく絵や写真も使って、よりリアルに事故の怖さをアピールしてより多くの注意が喚起される工夫もしていきましょう。

一方、せっかく取り付けた安全カバーが作業の邪魔になるということで外された現場を見たこともあります。安全第一とは言いますが、残念ながら能率や出荷が優先されている現場があるのも事実です。そのようなことがないように安全パトロールなどでチェックをして、もし発見した場合は安全軽視ということで厳重注意をして絶対に許さないようにして下さい。一件でも問題が見つかったら全社をチェックするくらいのことが必要です。

最後ですが、現場では何度も同じ人がミスを繰り返している場合があります。当人は気を付けているつもりでも、どうしても起きてしまうのです。この場合、あの人は不注意だということで、個人の資質が原因であると片付けられてしまうことがありますが、人をミスの原因としてしまうと、再発は決して止まりません。事例でご紹介した事故に対する物理的な再発防止を行った次は、会社が主導して先ほどの安全カバーを他の設備にも例外なく設置し、その他にシステムや機材のなどの不備がないかなどをくまなく見て回り対策し、ミスが再発しない様にすることが求められます。

安全第一は絶対です。事故を起こさない最大限の努力をいたしましょう!