脱力・カイゼントーク 第6回

今回はチョコ案を活性化し継続できるようにするための事例や、チョコ案の持つ意味などについてお話しいたします。

先回(第4回)のチョコ案の説明の中で、「チョコ案で特に大切なのは『ほめる』ことです。社長やリーダーは提出されたチョコ案を見て『良い!』と感じたら即座に実行者をほめてあげてください」と書きました。ほめることが大切だと書いてはみたものの、カイゼン結果を見てただほめれば社員がやる気になるというわけではありません。もちろんほめられて嫌な気分になる人は少ないと思いますが、ほめられただけで皆がやる気になるとは限りません。

では、誰にほめられたら嬉しいでしょうか?
みなさんが最初に思い浮かぶのは当然社長だと思います。次には部長や上司でしょうか。しかし、過去に私がチョコ案を実行する際に「社長や上司の方は良いカイゼンがあればほめてあげてください」と伝えてみたものの思ったような結果が出なかった経験があります。この時私は必死になって原因を追求しました。「あまり会話をしない会社だからほめるのが苦手なのかな?」「カイゼンをやらされている気持ちになっていて、ほめられても嬉しくないのかな?」などとそれ以降のカイゼンをする際にずっと頭の中で考えていました。そしてある日、その会社のチョコ案が貼り出された掲示板を再度眺めている際に私はあることに気づきました。

次のカイゼン会の時に私は社長と各部門の上司である方に1つ質問をしました。「チョコ案の内容は全て目を通しましたか?」答えはそれぞれでしたが、「一通り目は通しました」「私の部門の物のみ見ました」「ある程度見ました」と言った回答が多かったのです。当然のことですが、見てもいないカイゼンをほめられてもチョコ案を実行した人は心から喜ぶことはできません。この件をきっかけに、「貼り出されたチョコ案は社員も含めて必ず全員見ること」、「興味の出たカイゼンは現場も見に行くこと」というルールを決めました。

それ以降この会社のチョコ案はみるみる成長していきましたが、やはり誰も見てくれないものを頑張ることはできませんし、信頼関係も生まれません。自分のアイデアやカイゼンが会社の役に立ったという実感が自信につながりより良いカイゼンを生み出します。ただほめれば良いのではありません。しっかり見てほめることがこのチョコ案の重要なポイントです。

余談となりますがこの会社はではその後、チョコ案の発表会の際に社長賞、部長賞というものが設けられたようです。それぞれ受賞者には賞与などもあるようでカイゼンが盛り上がっています。私が気になったのは、「ベストカイゼン賞」というものでした。「これはどういう賞ですか?」と尋ねると、これは社長と部長を除いた全ての従業員が選ぶ賞とのことでした。この賞に選ばれているチョコ案は従業員全員が快適に仕事をできるためのカイゼンが選ばれていました。「これはいいアイデアだ!」と私も驚いたことを覚えています。

今回は「ほめること」から始まり、「見ること」の重要性についてお話しさせていただきました。誰かが見ていてくれることでモチベーションが上がったり、カイゼン結果を見ることでその人がどのようなカイゼンをしたいのかなど多くの発見があります。

チョコ案の魅力はこういったことでカイゼンに興味を持ってもらうことや、カイゼンを身近に感じてもらうことでもあります。このような継続がカイゼン能力を上げて会社経営を支える人材へと育てる力になるのです。