脱力・カイゼントーク 第4回

私のカイゼン手法の1つに「チョコ案」があります。どんなことでもいいのでチョコっとしたアイデア(案)を実行して、その内容を小さな用紙に書いて報告するという仕組みです。

カイゼンの仕組みとして一般的に広く知られているのは「カイゼン提案制度」だと思います。提案するカイゼンはその会社にふさわしいものである必要があり、効果も数値で説明することが求められるなどハードルが高く書類を作成するのも大変なので、一部の専門部署の活動にとどまっているケースも多いようです。

一方チョコ案は、棚にある部品の品名表示をしたり、設備の簡単な修理や表面キズの修復をしたりといった小さなことでも構わないので、全員が毎月1件のカイゼンを実行して報告する仕組みです。いくら小さなカイゼンでいいとはいえ、毎月となるとアイデアが続かないのでは?と思われるかもしれませんが、チョコ案では既に実施済のカイゼンであっても、もし必要であれば改めて自分のカイゼンとして実行することも奨励されますのでアイデア不足の心配はありません。こうして最初から大きな成果を求めるのではなく、全員がトレーニングのような形式で小さなカイゼンをコツコツと継続的に実行し実績を積むことによって、企業が独自のカイゼン力を発揮するのに必要な個々人の発想力や実行力を向上させます。これがチョコ案の目的です。

チョコ案は実行済のカイゼンなので、報告は簡単で構いません。日本語が不慣れな外国人従業員は母国語で書いても構いませんし、用紙にカイゼン前と後の写真を貼り付けても問題ありません。そして、定期的に発表会を開くなどすると、報告を聞いた人が応用したり新しいアイデアが生まれたりして、組織全体のカイゼンスピードが更に上がります。

チョコ案で特に大切なのは「ほめる」ことです。社長やリーダーは提出されたチョコ案を見て「良い!」と感じたら即座に実行者をほめてあげてください。読んで分からなければ現場に見に行けばいいし、その場での会話から新しいアイデアが生まれたりもします。実行者は自分のカイゼンがほめられたことで、会社が求めている方向性を理解することができ、今後の行動の判断基準ができます。最初はどうすれば良いのか分からなかった人でも、ほめられて気付いた基準に従ってカイゼンを継続しているうちに、会社全体に広がるような優れた事例が生まれるでしょう。それにより自分が役立っているという自信が付き、会社にとって貴重な人材として成長していくことができるのです。

チョコ案は、皆が継続的にカイゼンを実行することで個々人の発想力や実行力を向上させて、全社のカイゼンを更にレベルアップさせる手段であるということです。次回にその具体的な事例をご紹介いたします。