脱力・カイゼントーク 第45回

省人化をしたいのです カイゼン実行

食品製造R社の現場に伺いました。現場は、衛生面の管理は徹底されていましたが、生産のやり方は昔からやっていたというベルトコンベアを使ったいわゆるライン作業で、何か手を加えて変更したりするのが容易でない方式でした。現場を一通り見た感じではそれなりに整っていましたが、よく見ると要所要所にボトルネックとなっている作業がありました。これら以外にもなかなか変えることが難しい問題があると分かり、まずボトルネック作業を減らすためにモノの配置の整頓から始め、次いでそれに伴う整理をする必要があるとS工場長にお伝えしました。

これまでの連載で私のカイゼンについてご報告した中で、多くの場合に整理整頓から始めていますが、5Sを毎度必ずしもやらなければいけないわけではなく、最終的な問題解決をするのに必要なカイゼン力が十分にないので、5Sから始めて基本的なカイゼン力を身に付けるということです。まず一回、皆で片付けをしてみて、現場のカイゼン点を見付けようということです。省人化もデジタル化もここから始まります。

R社においても、最初に現場の皆さんにご挨拶をした際に、省人化に向けてどういうことを希望されますか?と聞きましたが、具体的なお返事はありませんでした。皆さんは困ってはいるが、どうすればいいかは分かっていなかったようでした。

その後、全員で整理整頓からカイゼンを始めました。整頓してボトルネックをなくし、それに伴う整理をして機能的で生産性の高い職場に変わりました。そして、どの工程を自動化するのか、どの工程は人が減らせるなどの意見やアイデアが従業員の中からちらほらと出始めました。S工場長は機械化やデジタル化が必要と思っていた省人化が、身近な整理整頓ででき始めたことで、カイゼン活動の大切さに気付いたようでした。

どんな工場でも一足飛びに省人化やデジタル化ができるということはありません。今、どのようなモノづくりが行われていて、どこにムダや問題があるのか?そしてすでにできている良い点は何か?などをしっかりと把握して、それをまずは自分たちでできることを議論することが大切なのです。デジタル化というとこれまでそういう経験が少ない人にとっては専門的なプログラミングなどがないとできないという気持ちが強いので、最初から外部の専門家に丸投げして頼むということはよくあります。しかしこの考え方は必ずしも正しくありません。デジタル化はこれまでの現場のカイゼンをレベルアップする手段です。

日本の製造業のデジタル化の遅れが問題となっていますが、慌てて専門家に依頼するのではなく、改めて身の回りの整理整頓を行い、カイゼン点を探し議論を交わし、その上でデジタル化することで更なる成果を出すという順番の大切さに私も新たな発見をすることができたカイゼンでした。