脱力・カイゼントーク 第44回

省人化をしたいのです

食品製造R社の製造担当役員のS工場長からメールでカイゼン指導の依頼が来ました。「商品の販売が好調で売り上げを大きく伸ばすチャンスなのですが、人手不足でこのままだとせっかくの機会を活かせない恐れがあり、省人化の指導をしてほしい」とのことでした。

早速、連絡を取りお話を伺いました。生産量の急増で残業や休日出勤をして何とか生産をしているがもう限界で、至急省人化が必要な状況だが、そのための設備は何から導入すればよいか分からない。またデジタル化などもほとんどしていないので、この機会にデジタル化も進めたいというお話でした。説明は続きましたが、なぜ省人化が必要かとか、省人化は進めるが品質は落とすわけにはいかない、といった考え方中心の説明が多く、現場で起きている具体的な問題などの説明はありません。そこで、私の方から省人化をする上でボトルネック工程があるのでしょうか?とか、どの工程をデジタル化したいのでしょうか?と具体的に質問をしてみましたが、答は曖昧で、現状把握が不十分であると感じました。

その後も話を続けていて分かったのですが、S工場長にはコンサルタントに頼めば省人化もデジタル化もやってもらえるという考えがあったようで、自分たちは何もしないでもよいという思い込みもあったようです。私が、成果を出すためにはまず何を自動化して何人の省人化をして何個の商品を作るのかといったゴールの数値設定が必要です。その上で、カイゼン実行の中心となる現場の皆さんが仕事の中にある問題点を把握し、どういうモノづくりに変えていきたいかを考え、自らカイゼンを実行する、という能力を付けないと省人化もデジタル化もできません、と申し上げると、工場長は少し困った様子でした。

少し不謹慎な言い方かもしれませんが、これは省人化やデジタル化における「あるある」だと思います。

例えば省人化でいえば、現状の作業の問題を把握せずカイゼンしないままで、そのまま機械化してしまうとどうなるでしょうか?その分の工数は減るでしょうが、人がいたので何とかなっていた品質不良が、人がいなくなったために不良が出始めて、その対応で新たな人が必要になるかもしれません。大きな投資をしたにもかかわらず成果を出せないどころか悪化することになったら会社は大損害を被ります。品質問題が起きなくても、本来であればもっと大きな省人化ができたのにそのずっと手前で終わってしまう可能性も大いにあります。どちらにしても求められるレベルの目的は達成できません。

デジタル化も同じです。先日ある工場でのデジタル化の失敗談を耳にしました。その会社では社長がこれからはデジタル化が必要だと考えましたが、社内にデジタルを分かる人がいないので、デジタル化の専門コンサルタントに依頼しました。そして、コンサルタントの言うままに、設備の稼働状況が自動記録される仕組みを導入しました。ところが、それまでにそういう情報の必要性を感じていなかった各機械の作業担当者はそのデータの分析に全く興味を示してくれず、宝の持ち腐れ状態のまま放置されているということでした。

S工場長はこのような事例の話や議論を通じて私の言うことを理解して下さり、私はR社の工場に伺うことになりました。