L社から来る生産計画指示が頻繁に変わることについて、更に情報収集を進め徐々に状況が分かってきました。L社の生産計画は、営業部門が過去の売り上げをベースに小売店からの注文状況を加味して作成していました。この生産計画がK社に届くわけですが、これは注文を締め切ってから来るものではありませんでした。実際には予想に反してオーダーが増えてしまったり、極端に少なかったりするので、まだ生産がスタートしていないものなどは随時L社の生産現場に変更を出すという流れが続いておりました。L社の生産現場でも生産計画が度々変動するので困っており、生産がまだ始まっていないものでも材料の発注が終わってしまっているものなどは実際にはその通りには生産していないということが分かりました。ではどのように最終的な生産数が決定するのかを調べてもらうと、L社では、営業部門が作成した計画に基づくのではなく、製造部門が実際の在庫状況、材料の調達状況、段取り替えなどの順番を踏まえて計画、順序を修正し、それを最終決定として生産していました。実際に作った数は前段階ではK社には伝わっておらず、結果としてL社の営業部が作成した生産計画とは違う不確定な情報に基づいた生産を余儀なくされていたのでした。
この状況をカイゼンするために、私は両社の営業部経由で情報をやり取りするのではなく、両社の製造部同士で直接情報交換を行うことの方が変更のない正しい生産ができると考え、L社の在庫状況と最終決定情報を共有できないかと問題提起しました。これは早速K社の営業からL社の営業へと伝えられ了承を得ることができ、L社の製造部門の最終決定情報と在庫情報を共有することができました。
新しい情報共有アプローチの導入により、K社はL社の生産要求に対して事前に準備する期間は減ったものの、より正確で効率的な生産計画を立てることができるようになり、必要最小限の在庫を維持しつつ、生産効率を大きくカイゼンすることができました。これにより、オフィス家具部品の生産においても、自動車部品と同様にスムーズな生産体制を確立することが可能になりました。
生産計画の頻繁な変更に直面した際には、内部の効率化だけでなく、サプライチェーン全体での情報共有とコミュニケーションの強化が重要です。K社の場合は、製造部門同士の直接的な情報交換で、予測困難な市場の需要変動に柔軟かつ迅速に対応することができました。
このように生産数の変動が多いものに対しては、スタンダードなカイゼンだけでなく、生産部門が営業部のつくる生産計画をベースに最終計画を変更することや、営業部門が生産部門にアドバイスをもらい生産効率が上がるオーダーの取り方をするなどの連携をすることで、難しいと思っていた問題も解決できるケースがあります。今回のカイゼンはK社からの依頼にも関わらずL社を含んだカイゼンになり珍しいケースでしたが、発注元との連携も両者によってメリットのあるカイゼンになることは多々あります。可能であれば生産計画を両者で議論するというのも一つの答えなのかもしれません。