脱力・カイゼントーク 第34回

新商品開発

精密センサーを生産しているG社でのカイゼン会でのことです。H社長から「柿内さんにはカイゼン活動の指導をしてもらっていますが、柿内さんのワイガヤを活用してより精度の高いセンサーの新開発の指導もして戴けますか?」との依頼がありました。内容を尋ねると、G社の業界ではセンサーの精密化競争があり、径を小さくしてより精密な測定を可能にすることが求められていました。これらは多品種少量生産で、自動化が難しく、個人の技能技術に頼る部分が大きいものでした。最先端のセンサー径は0.3ミリで、G社もこれを販売していましたが、生産は協力メーカーに委託しているということでした。H社長は主力商品の生産が他社任せになっており、比較的容易に生産可能な1.0ミリセンサーのみ自社生産という現状で、自社でも最先端の生産が見込めないと売り上げはいずれ限界に達してしまい、将来的に大きな問題になるという危機感を持っておられました。そこでカイゼン活動での、問題点探し、原因追及、アイデア出し、活発な議論が生まれた結果を今回も期待して依頼をして下さったのでした。

何故このような経緯で1.0ミリの生産だけにとどまってしまっているのかを伺うと、以前、G社で当時の最先端商品であった0.5ミリ径の製品に挑戦した際、品質がバラついて不良率が高く生産能力が上がらず、注文を取ったものの生産が間に合わず大問題になりかけたそうです。急遽、協力メーカーのI社に依頼したところ、そこには該当製品の生産に適した機材・ラインがあり、上手に生産してくれてコスト的にも非常に成果を上げたので、それ以来、営業部門は細径製品の生産をI社に依頼するようになりました。結果、G社内では細径の製品への挑戦がなくなり、1.0ミリなどの比較的廉価製品を生産していました。

その後、競争は0.3ミリに移り、更に生産が難しくなったので、益々I社に頼るようになりました。実は、0.3ミリ製品の生産はI社でも困難で、不良が多く利益が安定しない状況でしたが、G社は社内での生産を検討すらできない状態でした。

私は早速その現場に行き、作業をしている Jさんに、1.0ミリの製品は作れているけれど、それより細いモノはどこまで作れるのか?を尋ねたところ、0.8ミリまでなら不良を出さずに作れるという答を得ました。そこで早速、制作をお願いしてみました。しばらくして現場に行くと、0.8ミリの製品は見事にできていました。私は次の宿題として、0.5ミリにチャレンジしてほしいと依頼しました。Jさんは自信がなさそうでしたが、チャレンジを約束して下さいました。

次の改善会で現場に行くと、Jさんは残念そうな顔で、チャレンジはしたものの、ほとんど良品が作れなかったと報告をして下さいました。10本作って2本が良品で、残り8本は不良品でした。私は良品がゼロでなければ次につながると思っていたので、この結果は未来につながる第一歩として安心できる内容でした。思わず「Jさん、お疲れ様でした!良品が2本できれば次のステップに繋がりますよ」と伝えると、Jさんの不安げな表情がホッとしていたのを今でも覚えています。