ヒューマンエラー対応の職場づくり 第9回

9. ヒューマンエラー対策(ポカヨケ)の根本原則 その1

 ヒューマンエラーは、ポカミスとも称します。ヒューマンエラー対策は、「ポカ」を「ヨケル」ことから「ポカヨケ」と言うようになった経緯がありました。これは、筐体に6個のバネを入れる作業で単純ミスが時々発生していていた現場に、新郷重夫先生が指導に来られました。

 板に検数した6個のバネをセットにして、筐体と一緒に供給して挿入するやり方に替えて単純ミスがなくなったそうです。これを「バカヨケ」方式と命名されたそうです。

 女性のオペレータが「私、そんなにバカだったのですか」と突然泣き出してしまったそうです。そこで新郷先生は慌てて、「私もポカをよくやってますので、“ポカヨケ”に替えましょう」と慰められて、その女性は納得された逸話がありました。

 ポカヨケを単体で行うのではなく、品質保証体系から見ると不良の情報を前工程にフィードバックして、その情報から前工程から対策を確実に実施していくものです。その機能を最大限に発揮するには、異常を確実に検知して即生産を止めて、原因から真因をつかみ対策を行うことを狙っています。

 品質保証するなら、異常の検知、発見のためには抜き取り検査ではなく全数検査が必要です。でも全数検査はどうしても手間や工数がかかります。

 そこで多くの工場は手抜きをしてしまうのです。これでは品質保証ができません。そこで全数検査を行っても手間や工数がかからない「ポケヨケ」の考えが登場したのです。

 ミスの再発防止には、その工程や作業だけでなく、前工程の対策も必要です。自工程の不良は、いくら頑張っても半分しかカイゼンできません。前工程の仕掛、材料、素材、さらには設計の要因があるからです。これらも含めてカイゼンしないことには、品質は保証できません。ですから前工程も含めた源流へ遡るの取組みが必要になります。

 ヒューマンエラーの要因である些細なことや気づかなかったことが、積もり積もって不良や災害になって行きます。逆に些細なことや気づかなかったこと、つまり因子を全工程にわたって潰していくことが目を見開く大きなヒントになります。その因子を発見するやり方は、「不」がつくことを現場で発見し共有化することをお勧めします。

 不便、不満、不具合、不愉快、不安定、不手際、不明瞭、不始末、不規則、不良、不適、不備、不思議などがあります。人は不平不満をよく口にしますが、愚痴もカイゼンするためのヒントと捉えましょう。人はあまり良いことは言いませんが、悪口はすぐい言いますが、それを逆手に取ってカイゼンのネタにするのです。

 その方法として決して会議室ではなく現地現物現場で、実際に皆さんで立ち会ってワイガヤ方式で言語化します。その時に発言を決して批判しないことです。批判すると一瞬で雰囲気が壊れます。発言内容は、忘れないようにすぐに眼で見えるように書いて保存します。