脱力・カイゼントーク 第30回

今回は前回までと似て異なるカイゼンの事例をご紹介させていただこうと思います。
「新しく設立した子会社で生産を始めたのですが、生産遅れが激しく、新規の注文を取る目処がたたなくなって困っています、一度現場を見てくださいませんか?」というコンサルティングの依頼が精密機械メーカーC社からありました。C社は東京に本社工場があり、手狭になったので、地方に子会社のD社を設立した企業でした。

先回テーマに取り上げたA社は品質不良で生産遅れが発生していたのですが、今回のC社はどういう理由で遅れが出ているのでしょうか?

C社の依頼に応え、子会社のD社を訪れることにしました。この訪問にはC社の社長をはじめ、営業・技術の部長も同行しました。D社からは社長をはじめ工場長、技術部長、生産管理課長など、複数の管理職の方が迎えてくださいました。

D社の社長はC社の幹部の皆さんの前で生産遅れに対しての謝罪を繰り返していました。しかし生産遅れの理由や問題の解決方法についての具体的な説明がなく、その場では分からないことが多い印象でした。そこで私はまずは皆さんで実際の現場を確認しようと提案しました。

現場に行くと、予想通りモノが多く、通路や動線が塞がれているところがあるなど散らかっていました。私は初めて見る現場なのでいろいろと質問をしたのですが、「過去に作った製品のあまりの部品や現行製品の過剰在庫」と「一部の部品が不足で製品を完成できないでいる中間完成品」が多いことが分かりました。

C社の皆さんは私の質問に対するD社からの答えを聞いているうちに、問題の一端が本社の部品供給にあるのではないかと気付きました。D社は東京本社からの部品供給を受けるだけで、自らは発注を行っていないため、必要な部品が不足しても直接対応できない状況でした。このやり方はD社工場を作った当時、まずは生産立ち上げを優先するため、本社が管理業務を一手に引き受けていたのですが、それがそのまま変わらず続けられていたのです。その結果、D社の生産現場は適切に問題に対処できない状態にありました。本来なら親会社のC社にカイゼン要求をするべきでしたが、子会社の立場からは言えずにいたのかもしれません。

C社の社長はこの状況を知り、至急に両社で問題を解決すべきだと決定しました。そして私に対しては、早期解決のための具体的な指導の依頼をしました。

私は、これだけ大きな問題が起きていることと、各部署がそれなりの対応をしているものの、根本的な解決に至っていいないところに問題点があると思い、すぐに対応策を出す前に、両社が一緒になって現場の、整理・整頓を行い、現状を正確に把握することから始めるべきだと提案しました。

幸い、C社の社長はその提案に理解をして下さり、その場で両社の関係部署が一緒に活動をして根本的なカイゼンをする指示を出して下さいました。