ヒューマンエラー対応の職場づくり 第5回

5. リーダーは、ミスを抑えるにはどうするか?その1

 ミスの発生する要因として、大きな要素は意外にも職場の人間関係の良さ悪さです。正常時は問題ありませんが、異常や異常の前の「はてな?おや?なに?」といったヒヤリハットの前の「モヤモヤ」状態になれば、すぐに周りの人と共有化する勇気をもった職場の雰囲気にしていくことが大切だと考えています。

 コンサルタントとして活動して、海外も含めて多くの工場を見てきました。そこで分かったのは、外部の問題は1割程度で、多くの場合は内部の人間関係の悪さが9割も占めていることでした。

 国内の指導先ですが、10年以上も出荷検査での不良ゼロ、市場クレームゼロの職場があります。工程内のミスはわずかにありましたが、問題になる前にオペレータが気づき上司に相談されます。

 余分な仕掛や工具などはなく、必要なものだけで標準化された作業で生産されていました。ミスやムダになる要因が極めて少ないので、慌てることも少なく何か異常が発生しても生産を止めて一緒に考える余裕を持っておられました。お金を使わないカイゼンが徹底して行われ、常に改善提案も多く提出実践されている職場でした。

 なぜこのような職場になったのかと色々とヒアリングなどで検討した結果、一番の要因と考えたのが上司の率先力と職場の規律の良さでした。その上司の雰囲気づくりの良さは、いつも笑顔で怒った顔は見たことがありません。

 まるで生きておられるお釈迦様のようです。すぐに問題があれば共有化し、改善が必要となればカイゼンを皆と一緒にすぐにやってしまうという行動力などに気づかされました。

 まだまだ要因はあるかと思いますが、職場の社員全員に対して、率先垂範し「自ら考え、自ら“考動”し、自らの価値を上げていく人を育てる」ことを取り組む過程をその経営トップと見てきました。彼の職場の雰囲気は変わり、そしてヒューマンエラーの要因も次第に消滅していくと考えます。これはチームマネジメントの業務になります。

 この“考動”と言うのは、自ら考えてから行動することで、前回上手くいかなかったら今度はこうする、別なアイデアでやってみるなど、少し賢くやる、を意味する造語です。ちなみに“行動”は、言われたことをすぐにやることです。

 職場では、モノの置き方でムダの6割もあるのは実体験です。モノがあり過ぎると、ムダやミスの温床になるのです。必要なモノの原則は、そのオーダーの1つだけです。まとめて1日分の出庫、組立現場には3日分以上、機械加工現場では2週間分以上など、カイゼンできていない乱場やカオスの実態です。例えば仕掛が多くあり、工程が離れ小島にあり、1工程ごとにバッチ(まとめ)作業で運ぶやり方では、運搬がやりづらく取り置きのムダなどが多く発生します。

 そこで、まず余分な仕掛を撤去します。1日分、2時間分などできるだけ少なくします。それを良く流れる代表的な機種を選び、最小の仕掛で流すやり方にすれば、運搬や移動は極端に短縮されます。空きスペースも生れます。空きスペースができると余裕ができ、次の構想が浮かんできます。