脱力・カイゼントーク 第3回

先回は私がコンサルタントになれた経緯をお話ししました。なれたことはもちろん良かったのですが、先輩のマネをしながらのコンサルティングでしたので、当時の私には特徴がありませんでした。そこで何とか自分らしさを持ちたいと思い始めました。

自動車用整備機器製造のA社の現場で5Sをしていた時のことですが、社長のYさんから「柿内さんの5Sはこれまで私が経験してきた5Sと違って面白いね」と言われました。理由を尋ねると、製造部門だけではなく、社長や製造以外の部門も一緒になってワイワイと5Sをするので、いろいろな意見が出てカイゼンの質と量が向上するということでした。それまで製造の現場の人たち中心で行っていた5Sの場合は決まったルールに従って行っていたけれど、社長や他部門の人たちも一緒になって5Sをすると、ルールを作りながら実行するような感じになってとても楽しいとも教えてくださいました。

私は他の5Sを知らなかったので驚きました。先輩のマネをしていたと申しましたが、5Sについては実際に見たわけではなく自分流でやっていたのです。特徴がないと思い困っていた私にとってY社長の情報はとてもありがたいものであり、研究してみようと思いました。参加者が生き生きと楽しそうに活動して、これまでにない新しいアイデアと、一緒にやることによる大きな実行力を同時に生み出せるということでしたが、私はここに新しいニーズがあることに気付きました。それまで言葉としては使っていましたが、具体的な手段として示すことができていなかった「全体最適を実現するカイゼン方法」というニーズです。

それまで普通だと思っていた私のカイゼン(コンサルティング)ですが、改めて全体を客観的に見直してみることにしました。A社長を始め多くのクライアントの方々に話を伺い、経営者がこれまでのカイゼンのどこに不満を感じておられるか、あるいはカイゼンを通じてどういうことを実現したいと考えておられるかなどを調べました。また一般的な5Sと自分がやっている5Sの比較をし、その中で全体最適化に効果がある部分を抽出するなどを行いました。その結果、「全体最適を実現するカイゼン方法」というニーズに応えることができる付加価値の付いたカイゼンのやり方を体系化することができたのです。私はその手法に『KZ法』という名前を付けて全体最適カイゼンの手法としてまとめ、最終的には本を出すことができ、博士号も取得できました。

これをきっかけに新たな付加価値のあるコンサルティングを始めることができ、それを私の特徴とするようになりました。そして、その付加価値が需要を生み出すことにつながり、KZ法を学びたいというお客様に出会うこともできました。

Y社長からの一言をきっかけに、私の仕事のやり方の中に自分が気付いていなかった付加価値の存在を発見することができ、その後のコンサルティングに活用することができるようになったのですが、もしこの機会がなかったら...と考えると背筋が凍る思いです。

現在、私はこれまで広げて来たこのKZ法を現代のニーズを取り入れてより付加価値のある新バージョンにしていきたいと研究を始めています。お客様が望む付加価値という切り口に注目して、ニーズにお応えできるより高い価値を提供できるモノづくりを追求していきたいと考えています。