脱力・カイゼントーク 第13回

最近、人生において学び直しの必要性が言われ始めていて、「リ・ラーニング」や「リ・スキリング」という言葉がよく聞かれるようになりました。確かに変化のスピードが速まっており、学生時代に学んだことだけでは将来の仕事に対応するのが難しくなっていると感じます。

そこで、私はコンサルタントとしてこれから何を学び直すべきかを考えてみました。

先回、トヨタや、大丸のSNS動画を見て、若い世代と私の間にモノの見方や考え方に大きな違いがあることに気づいたと書きました。私はこれまで「理論的には正しいかもしれないが、実際の社会では通用しない」と考えることが多かったのですが、若い世代は私より柔軟な発想を持ち、古い慣習にとらわれていないように思えました。

それから、自動車業界の大きな変化にも注目しました。EV化が大きな話題になっていますが、新しい製造方法も次々に登場しています。現在はたくさんのプレス部品を溶接して作っている自動車のシャシ部分を、アルミ鋳造で一体成型して1工程・1部品で作るメガキャストをテスラが発表しました(トヨタもギガキャストを発表)。あるいは電気自動車の自動運転技術を利用してコンベアラインを廃止する構想など革新的な技術も発表されています。私はこれらの可能性を考えたことがなかったので驚きました。自動車業界に限らず他の分野でも驚くべき変化が起きており、改めて頭を柔らかくする必要があると感じ、ここに新たな学び直しのポイントがあると思いました。

あまりに成功体験が大きいと、それにとらわれて新たな変化に対応できなくなる、いわゆる「イノベーションのジレンマ」が生じることがあります。私はこれまでの日本の発展にカイゼンが果たした功績はとても大きいと確信していますが、現在、日本のカイゼンが「イノベーションのジレンマ」に直面している可能性があるとも考えています。

率直に言うと、現在、多くの会社のカイゼン活動は主にコスト削減を目的としています。コストをかけずにカイゼンすることが重要視されており、その結果、コストがかかるカイゼンは優先度が低くなる傾向があるようです。しかし、この考えが強すぎると革新的なチャレンジを妨げる可能性があります。コスト削減だけでなく、投資をして大きな利益を生み出す視点も大切です。カイゼンにも革新的なチャレンジが必要です。

あるいは、お客様が喜ぶサービスや商品の検討に目が向かないことも起きています。実際、お客様が自社の製品をどう使っているかや、どのような機能を望んでおられるかなどのお客様の意見やニーズを活用していないことがあり、その結果、せっかくのカイゼンの力が商品開発などに活かしきれていないことが多いのです。

近年のカイゼンは過去の成功体験がある故に、変化し切れていないところがあり、この制約を開放して、もっと大きな範囲をカバーするカイゼンをする必要性があります。私の「リ・スキリング」の目標はこれまでのカイゼンを見直して、これからの時代にマッチするよう、範囲を広げ挑戦的なプロジェクトにも積極的に取り組めるような新しいカイゼンを指導できるようになることといたします。