新しいモノづくりの考え方 第19回

これからの日本式デジタル化⑱

先回、7つのムダのうちの3つのムダにデジタルの力を導入するとどうパワーアップするかをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。つくり過ぎのムダではムダの発生の瞬間の見える化(部門間の生産進捗の見える化)、手待ちのムダでは発生したムダの活用、運搬のムダでは、これまで見えにくかったトラックでの運搬のムダの効率化、工場内物流での自動化などによるパワーアップの話をさせて戴きました。お役に立てた情報はありましたでしょうか。今回は残りの4つのうちの2つのムダのパワーアップについてお話しいたします。

4.加工そのもののムダ 「加工そのもののムダ」とはお客様が評価してくれない仕事、すなわち代金が支払われない仕事をしていることを指します。例えば、受注が決まって生産を始めたのはいいが、想定を超えて不良が多く発生したので検査を追加した、といった場合の追加の検査や手直しの費用は当然のことですがお客様に請求できません。すぐにカイゼンして当初の営業見積通りの作業に戻すべきですが、機敏な対応ができずズルズルと余分な仕事が続いている状況をみかけます。このままだと利益が減るどころか赤字になりかねません。しかし製造部門は不良を流出させないことで頭がいっぱいで、当初の営業見積で想定した利益が出ていないといったことにまで気が回らないということは多いのです。極端な事例では、この状況が長引いた結果、このあってはならない検査が標準作業となってしまっていたというケースもありました。一方、営業部門も現在の生産の状況が営業見積時と比較してどうなっているかを知る機会はほとんどないでしょう。このような事態を避けるために、生産データをデジタル化することによって、かかった作業工数や生産数などを使って製品原価をリアルタイムに計算し、営業が注文を取った時の見積価格の原価と比較をして赤字幅の大きい製品を自動的にリストアップするようにしておくと、問題が見える化されカイゼンする優先順位が明確になり、大きな損失となることを防げます。

5.在庫のムダ ナゼ在庫がムダなのか?の理由ですが、在庫はお金がモノに変わったものであり、もし多めに持ってそれが製品にならずそのまま放置されてしまうと使ったお金が回収できなくなり資金繰りにも影響が出るからです。実際に倉庫で5S活動をすると何年間も全く動きがない不動在庫が大量に見つかることがあります。その原因の一つは現場の担当者は在庫が切れることを恐れるが、逆に余ることは恐れないということがあり、早め多めに買ったり作ったりされる傾向があるからです。それともう一つ、品質や設備などに問題があっても、在庫があるとその場の対応ができるので顕在化せず、本質的な対応ができなくなるという理由です。つまり在庫はもちろん適正量を持つことは必要ですが、不必要に多く持たない様にすることが大切です。

担当者が早め多めに買ったり作ったりする理由として、切れることが心配だからということもありますが、部品や材料の入出庫の記録を手書きでしているので、記録忘れや集計の遅れなどで在庫管理が正確に行われていないという事情もあるものです。しかしバーコードを使ったデジタル管理を導入することで、在庫数の記録が正確になり、更にリアルタイムに各部門の在庫量と発注数が一目で分かるようになります。その結果、部門間での連携も可能になり、安全在庫の削減をしたり、ロットサイズを縮小したりあるいは共通の部品をギリギリまで減らす等のカイゼンをして在庫を大幅に削減することができます。モノの移動で時々刻々変動する数をデジタル化でリアルタイムにとらえられるようになることで、アナログ時代の限界を超えて「在庫のムダ」を減らすことができるようになります。また季節変動のような情報を織り込むことで更に精度の高い在庫管理ができます。

次回は最後の二つ、「動作のムダ」と「不良を作るムダ」についてご説明いたします。どんな内容になるか?想像してみてください。お楽しみに!